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【レポート】リノベーションまちづくり マネー争奪戦「マネーの獅子!」

 

2016年5月24日(火)〜29日(日)、全国のリノベーションまちづくりのコミュニティが一堂に会する「リノベーションまちづくりサミッ ト!!!2016」が、3331 Arts Chiyodaにて開催されました。そのメインイベントのひとつとして「マネーの獅子(らいおん)!」が注目を集めました。

突然ですが、12年ほど前「マネーの虎」というテレビ番組があったのを覚えていますか? 起業を目指す挑戦者たちが、”マネーの虎”と呼ばれる年商数十億円の凄腕の経営者たちにビジネスプランを提案し、マネーを獲得するあの番組。

そ の番組のファイナンス主義に敬意を表して名づけられた「マネーの獅子!」は、事業性とエリア再生を担う公共性を兼備した新しいまちづくりのプレイヤーたち を支援するための企画です。全国各地からリノベーションの事業計画を募り、リノベーション事業のプロである経営者の前で事業コンセプトや収支計画、運営計 画をプレゼンテーションする。これに対し、獅子たちが容赦ないツッコミと厳正なる審査を行い、優秀な事業には成功のためのアドバイスと活動支援金を贈る、 という内容です。

●“パブリックマインド”を持つ人たちがつながる場

「この時代だからこそ、行政からの補助金に頼らず、自立して事業を行い、民間人でありながらもパブリックマインドを持ち、公共の一翼を担ってコミュニティを維持していく新しい主体が必要」。主催者であるリノベリング代表・嶋田洋平さんはそう語ります。

「いま、日本は人口減少、特に生産年齢人口の減少や高齢化・少子化が同時に進む縮退の局面にあります。自治体の税収が減り続ける一方、社会福祉に掛かる支出はどんどん増大していく。このままでは、自治体の財政状況はどんどん悪化し、これまで通りの公共サービスを維持していくことは、非常に困難になるでしょう」

嶋田さんが事業を始める時に徹底して言い続けているのが、補助金ではなく、民間の資金を使って事業化するということの重要性です。補助金を使っても事業を立ち上げることはできますが、さまざまな制限があったりして、自由にお金を使うことは出来ません。本当に必要なのは、自己資金や地域の金融機関からの融資で、地域全体をもっと良くしたいという想い(パブリックマインド)を持った人を増やすこと。そのためには、事業性をしっかりと持たせる必要がある。それを実際に証明してみようというのが、このイベントの目的です。

●マネーは全国の支援者から

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写真)全国から集まった支援金は、なんと126万2,000円!

今回、そんなパブリックマインドを持つまちづくりのプレイヤーを発掘するために用意した支援金は100万円。イベントの共催者である株式会社READYFORが運営するクラウドファンディングサービス『READYFOR?』にて、嶋田さんが全国でリノベーションまちづくりを行う地域や仲間たちにファンドを呼び掛けて集めました。

集まったのは、54名の方からの支援金と応援メッセージ。こうして、事業が始まる前から共感者を増やしていくことが出来るのもクラウドファンディングの強み。さらに、どれくらいの人たちが自分たちの事業を支援してくれているのかという感触が掴むことが出来るので、「挑戦者たちのモチベーション向上にもつながるはず」と、嶋田さん。

●それぞれのまちへの想い抱く挑戦者たち

マネーを求めて全国から応募してきたのは、次の4組。

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写真)「タイルスタイル」のリーダー・玉川さん。タイル愛が強すぎるため、顔をタイル柄に塗って登場!

ひと組目は、岐阜県瑞浪市から。「タイルスタイル」のリーダー・玉川幸枝さんは、タイルの一大産地である瑞浪市出身で、家業は釉薬製造。製造の分業化や商品の画一化が進み、焼き物産業が衰退するなか、タイルを世の中に増やし、地域を元気にしたい。そのために、オリジナルタイルを開発し、商社やメーカーを通さずに製造者と施主を直接つなぐという、流通自体のリノベーションを企み中。オリジナルタイルの魅力を伝える映像制作費用として30万円を希望。

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写真)「日の出おとな家守舎」の沢崎愼祐さん。現在子育てに奮闘中

ふた組目は、東京都豊島区から。子育て中のパパもメンバーである「日の出おとな家守舎」が提案するのは、行政任せの子育て・教育モデルから脱し、まち全体で子どもたちに教育を行う事業プラン。たとえば、既存商店街やポケットパーク、あき地などの地域資源を活用してこども商店街にするなど、仕事を体験できる場所づくりを目指す。軒先でこどもたちが販売用に使うモバイル屋台の購入費と映像制作費として55万円を希望。

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写真)「宿坊クリエイティブ」の武内淳さん。リノベーションスクールで生まれたプランをさらにブラッシュアップして登場

3組目は、和歌山県和歌山市から。すでにまちなかの活性化プロジェクトを手掛けているメンバー率いる「宿坊クリエイティブ」は、かつては和歌山城の外堀として賑わった水辺を再生するため、水辺に面した建物をリノベーションして「和歌山のお酒と肴」が楽しめる日本酒バー「水辺座」を2016年にオープン。さらに人の繋がりが生まれる空間をつくるため、水際にデッキを設置したいと100万円を希望。

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写真)「wagamama」の山本倫子さん。ママたちが自分たちの活躍するコミュニティをつくる、新しいタイプの家守会社をつくる

4組目は、愛知県岡崎市から。子育て中のママたちによって構成されるチーム「wagamama」が目指すのは、ママたちが自分の暮らし方を自由に選べて、子育てをしたくなるまち。まずは、ママたちのための外出や雇用・起業の機会とコミュニティを生み出すために調味料や食材にこだわったデリ販売や託児付き料理教室の開催など、ママたちのワガママを叶える空間づくりから。移動販売車の制作費や料理教室で使うシャワーユニットなどの工事費として、62万円を希望。

それぞれ個性的な事業を描く挑戦者ですが、共通しているのは、どのチームもエリアの課題を自分ごととして捉えているということ。その課題を解決するためのマネーの必要性をどれだけアピール出来るのかが、マネー獲得への別れ道になります。果たして、マネーの獅子たちは微笑んでくれるのか? ついに最終審査の日がやってきました。

●吠える獅子、マネー成立なるか?

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写真)審査の様子。挑戦者たちが提案する事業プランに、険しい表情を浮かべる獅子たち

最終審査当日、メゾン青樹・青木純さんの司会のもと、獅子としてステージに登場したのは、ブルースタジオ・大島芳彦さん、SPEAC・吉里裕也さんと林厚見さん、Open A・馬場正尊さん、ワークヴィジョンズ・西村浩さん、リノベリング・嶋田洋平さんというリノベーション事業のプロ経営者たち。さらに、『READYFOR?』にてキュレーター室のマネージャーを務める田才諒哉さんの姿も。

挑戦者が獅子たちの前でプレゼンテーションを行い、優秀な事業計画には事業支援金としてのマネーが動き、共感を得られない場合は「ノーマネー」でフィニッシュとなります。獅子たちの前にずらりと並べられたマネー(特製の10万円札!)。そして、その前に座る挑戦者たちのなかには、資料づくりやステージ練習などのプレゼン準備に追われ、徹夜明けで目を赤くしている人も。

張り詰めた空気のなか、「タイルスタイル」をトップバッターにプレゼンがスタート。緊張して震える声、刻々と迫る待ち時間のリミット。それでも力強く、それぞれが描く事業とそこから生まれる未来図を訴える挑戦者たち。その様子を、まるで獲物を狙うかのような鋭い目で獅子たちが見つめます。

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写真)獅子たちの鋭い言葉に、途中言葉を詰まらせる挑戦者も……

審査時間を迎え、さっそく獅子たちから声が上がります。

「その事業で地域を救えるの? 金の使い方が安っぽくない?」(西村さん)
「面白いタイルって何なの?」(吉里さん)
「エリアマーケティング弱くない?」(嶋田さん)
「本当にやりきれるの? あなたが今までやりきった凄いことって何?」(林さん)

具体性に迫る質問が飛ぶなか、馬場さんから事業計画に不可欠な視点を確認する声が。「みんな、何ができるキャラで構成されたチームなのか、いまいち顔が見えないんだよね。そのプラン、ひとりでやんの? 仲間はいるの? そういう部分を具体的にすることが、事業の骨組みを決めるんだよ。総じてどのチームもプロモーションが弱い」。

それぞれの事業提案について、「タイルスタイル」は、構造改革などを積極的に説明したものの、資金の使い方とプロモーションの打ち方の弱さを指摘されます。「wagamama」は、収支計画の仕組みに対し「お金の匂いがしない」とばっさり。「宿坊クリエイティブ」は、デッキといったハード面ではなく、どのように魅力的な水辺にしたいのか、肝心のソフト面が抜けていると指摘され、「日の出おとな家守舎」は、前提であるエリアマーケティングが足りず、事業目的と計画の間にズレが生じている指摘されます。

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写真)なかなか動かないマネー。この後、嶋田さんのひと言で会場の流れが変わる

もう、マネーは動かないのではないのか……。そんな思いが頭をよぎるなか、たてがみを失ったライオンとの異名も持つ嶋田さんが再び口を開きます。

「ぼく、ママに弱いんですよ」

その言葉から、ついにマネーが動き始めます。他の獅子たちからの声もあって、「タイルスタイル」、「wagamama」、「日の出おとな家守舎」にそれぞれ30万、「宿坊クリエイティブ」に10万。そこで終わりかと思いきや、自らのポケットマネーを出す獅子も。

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写真)挑戦者と同じ地域出身のこの男性は、「まちを盛り上げてほしいので出します!」と、その場で小切手にサイン

すると会場からも、挑戦者と同郷だという観覧者から「応援したい」と言う声が。そこに居合わせた人たちが自分の目と耳で判断し、自らのお金を投じて共感したプレイヤーを応援するという、まさに「マネーの獅子!」の企画を始めた時に描いていた支援の形が生まれた瞬間です。

その結果、「タイルスタイル」は80万、「宿坊クリエイティブ」は105万、「日の出おとな家守舎」は50万と「wagamama」は52万を獲得しました。

●まちづくりの秘訣は”ファイナンス”

審査を終え、見事マネーを手に入れた挑戦者たちに、感想を伺いました。

「リノベーション界の偉大な方々から指摘を受けられるチャンスは、自分たちでつくろうと思ってもなかなかつくれない。獅子たちからは、出資を受ける責任の大きさやきれいごとだけでは続かないビジネスの厳しさを学んだ。最高にエキサイティングな時間だった」(wagamama)

「『きれいごとにしか聞こえない』と、事業プランに対して鋭く痛いツッコミがあり、改めて自分たちは何がしたいのか、プランを白紙に戻し何度も練り直した。本番に挑んでみて、獅子たちの意見もあり、改めてタイルでまちの価値の向上に貢献できると再認識するきっかけになった」(タイルスタイル)

「川辺にデッキをつくる提案を行ったが、ハードばかりに偏ってしまい、どのように魅力的な水辺にするかという考え至っていなかったことを反省。水辺で美味しいお酒と食べ物を提供すること、店の魅力を情報発信することに力を入れて、まずは自分達の店のファンを増やしたい」(宿坊クリエイティブ)

「そもそも、地域の課題は何なのか、直前になってゼロから計画を練り直した。獅子たちからの『教育分野の仲間が必要では?』というアドバイスを受け、本当に貴重な機会になった」(日の出おとな家守舎)

それぞれが、これから事業を始めていくにあたって、獅子たちの洗礼を受けた様子。今後は、それぞれが獲得した支援金を活用して、本格的に事業化へと踏み出す予定。「wagamama」は物件の改修工事が間もなく始まり、今秋にはオープン予定。「タイルスタイル」は、小ロット生産用の窯を購入し、今夏からビジネスを開始。「宿坊クリエイティブ」はデッキ計画をやめ、まずは店の魅力を情報発信することに力を入れることに時間を掛けるのだそう。「条件付き成立」となった「日の出おとな家守舎」は、より多くの方々に共感を得られるプランにブラッシュアップしてから動き出したいと、それぞれいきいきとした表情で語っていました。

「これからの時代のまちづくり成功の秘訣はファイナンスにある!」という嶋田さんの言葉通り、現実的な収支計画を立てれば、補助金に頼らずとも、民間から出し合える仕組みで事業性を確保することは出来る。時には、個人のポケットマネーをまちに投資しながら、エリアの未来図をはっきりと描き、多くの人の共感を集めること。これらの要素がそろって、ようやく事業は動くもの。そして、それらのエネルギーを生み出すことができるのが、「マネーの獅子!」のステージです。

文:原山幸恵(tarakusa)

クラウドファンディングサービス『READY FOR?』にて募らせていただいた優秀なまちづくり事業者に贈る支援金は、54名の方々にご支援いただき、目標金額の100万円を達成いたしました!(最終達成金額126万2,000円)

ご協力いただきました皆様、ありがとうございました!

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