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【レポート】ユニットマスターたちのリノベーションスクール

2016年5月24日(火)〜29日(日)、全国のリノベーションまちづくりの取り組みを紹介する「リノベーションまちづくりサミット!!!2016」が、3331 Arts Chiyodaにて開催されました。連日さまざまな登壇者を迎えてイベントが行われるなか、特に注目を集めたイベントのひとつが、これまでリノベーションスクールで偉力を現してきたユニットマスターたちが、それぞれのまちづくりの知識とプライドをかけて事業プランを提案する「ユニットマスターたちのリノベーションスクール」。

登場したのは、明石卓巳さんや岩本唯史さん、小野裕之さん、市来広一郎さん、岸本千佳さん、倉石智典さん、瀨川翠さん、田中歩さん、馬場祐介さん、平松圭さん、三浦丈典さん、宮崎晃吉さん、宮部浩幸さん、吉野智和さんなど、全国各地で活躍する14名のユニットマスターたち。ユニットマスターのまちづくりの視点や事業構想の手法を間近で見ることができる貴重な1日となりました。

●スピードと構想力で勝負する

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写真)開校式。リノベリング・嶋田さんの「トーキョーをリノベーションしよう!」という掛け声から始まった

当日は、ユニットマスターとともに事業プランをつくるプレイヤーを特別に会場から1名選抜することに。真っ先に手を挙げたのは鳥取家守舎の高藤宏夫さん。出揃った15人は、くじ引きで3ユニットに分けられました。

それぞれのユニットにリノベーション案件が課せられました。ひとつ目は、池袋の東口からまっすぐ続く池袋東口明治通り。ふたつ目は、東京の新橋〜虎ノ門間をつなぐマッカーサー道路内の新虎通りと呼ばれるエリア。3つ目は、東京都・豊島区の豊島区立旧高田小学校跡。

どれもスケールが大きく難しそう……、と思いきや、むしろやる気を掻き立てられた様子のユニットマスターたち。資料を片手に、さっそくユニットワークがスタートしました。

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写真)ユニットマスターの後ろで、一般来場者たちが立ち替わり来てワークを観察

エリアに埋もれたリソースを見つけ出すため、突き抜けたコンセプトで提案をつくるため、歯に衣着せぬ意見交換が繰り広げられます。どんどん事業計画に落とし込まれていく様子を、興味深く間近で観察する一般来場者。ユニットマスターたちの手法をライブ感覚で味わえるのも、このイベントの魅力。そして、刻々と迫るプレゼンの時間。どんな事業プランが登場するのか、期待が高まります。

●それぞれの手法から生まれた事業プラン

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写真)審査員もユニットマスターたち

公開プレゼンでは、ブルースタジオ・大島芳彦さんが審査委員長を務め、メゾン青樹・青木純さん、HOME’S総研・島原万丈さん、ワークヴィジョンズ・西村浩さん、Open A・馬場正尊さん、SPEAC・林厚見さんと吉里裕也さんが審査員として登場。

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写真)ユニットAは、明石さん、平松さん、岩本さん、馬場さん、高藤さん

トップバッターは、「池袋東口明治通り」を担当したユニットA。20年後の池袋のグランドデザインとして、もともと池があったという池袋の歴史に着目し、「駅前に池を。グリーン大通りに水を」をコンセプトに、駅前空間を海外の噴水ショーのようなインパクトのある水辺空間にするという、対象空間自体のスケールの大きさを存分に活かした事業プランを提案。

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写真)駅前を噴水空間にした時のイメージ

実は、地下水が豊富な池袋。そのエリアの環境を応用し、高低差を利用しながらグリーン通りにも水の流れをつくり、その上をライトレールが走る。民間家守会社を設立し、莫大な予算が掛かるであろうと予想される工事費と維持費は、池袋駅前に商業施設を構える西武ホールディングスにネーミングライツ(公共施設等への愛称を付与する権利)を与えることで調達。水辺の新しい可能性を創造するミズベリング・岩本さんの存在感を感じる内容となりました。

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写真)ユニットBは、宮部さん、岸本さん、瀨川さん、三浦さん、吉野さん

2番目は、マッカーサー道路を担当したユニットB。限られた時間のなかで唯一現場を決行した彼らが提案したのは、「TOKYO JACK PARADE〜魅惑の回転レストラン〜」。

都心部のオフィス街・虎ノ門。平日はビジネスマンで賑わっているものの、土日は車や人さえもあまり通らない「使われない道」でした。歩いていて楽しい道に変えたいという想いのもと、「大量生産から多様生産のパレードへ」をコンセプトに、お客さんが動くのではなく、小さな事業者を含む出店者が次々と道をぐるぐるとまわってフードやサービスを提供する、摩訶不思議な事業プランを提案します。

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写真)瀬川さんが描いたイラスト。コンセプトがわかりやすく描かれている

ひときわ目を引くイラストにて世界観を表現したのは、設計事務所 Studio Tokyo West・瀬川さん。これまで見たことのないサーカスのような賑やかな光景に、会場に来ていた森ビルの担当者も驚きの表情を浮かべます。運営形態としては、東京都から場所を賃借し、TOKYO JACK PARADEが企画・イベント運営を担当。出展者はTOKYO JACK PARADEに出店料を払い、運用していく仕組みです。一方、会場からは「でも、一日中回り続けると結構な体力勝負となるのでは?」というツッコミも。

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写真)ユニットCは、小野さん、市来さん、倉石さん、田中さん、宮崎さん

3番目は、豊島区立旧高田小学校跡を担当したユニットC。廃校になった小学校の校舎を取り壊し、防災機能を持った公園としての整備が計画されていますが、「豊島区リノベーションまちづくり構想」のコンセプトスケッチにあるような、子育て世代のファミリーや地域の若い人たち、高齢者が楽しく過ごせる場所にしたいと、リノベーションスクールに提案が求められた案件です。
そこに提案されたのは、敷地を活用したエリアにシフトした「TERMINAL PARK」。“TERMINAL”は、ターミナル駅である池袋駅のこと。豊島区と日本各地とをつなぐ、人・物・金・知恵の交流拠点として活用します。

描くのは、かつて賑わっていた江戸地代の日本橋のような多世代が集まって賑わう市場さながらの風景。キャンプ場や産直マーケット、市民菜園、温泉が楽しめるほか、周囲に残る藩邸はゲストハウスやシェアハウスとして活用し、滞在できる拠点をつくります。

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写真)敷地にさまざまなコンテンツを盛り込み、市場のような賑やかな空間へ

管理運営は民間家守会社が行い、運営費は出展者から集めた出店料と地元の住人や地域からの出資を募る。しかし、審査員からは「コンテンツを盛り込みすぎ」というダメ出しも。

たった数時間で、そのエリアが置かれている環境や課題、リソースを的確に分析し、事業プランを提案したユニットマスターたち。そして、ついに結果発表へ。

●事業プランは“ひとつのコンセプト” で突き抜ける

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写真)優秀賞のわくわく沖縄旅行(?)をゲットしたユニットB

どのユニットも、それぞれのエリアの課題を見据えたユニークな事業プランを提案しました。そのなかで、特に審査員たちの心を掴んだのは、ユニットBの「TOKYO JACK PARADE」。賞品として、2泊3日の豪華沖縄旅行(と見せかけて、実は、リノベーションスクールにユニットマスターとして参加する旅!笑)が授与されました。

ひとつのコンセプトで突き抜けた点と細かいビジネスモデルの説明ではなく、「この場所がこう変わったら、ワクワクするよね!」という世界観をイラストで表現したことが高く評価されました。わかりやすく、完結にイメージが伝わったというのが、審査員の心を掴んだ勝因です。「現場でアイデアが一気に閃き、タイトルもコンセプトもほぼ固まっていた」と語るメンバー。人並みはずれたフットワークの軽さも、ユニットマスターの能力のひとつに違いありません。

●当事者意識を持ってまちの未来を描くこと

常に当事者意識を持ちながら、時にはスケールを大きく未来を描き、誰よりも楽しむユニットマスターたち。彼らに共通しているのは、まちの真のリソースを取り上げること、どんな時も自らの意見をぶつけること、コンセプチュアルに突き抜けること、軸となる提案ポイントを整理すること、スピード感を持って展開すること、フットワークが軽いこと、そして、なにより当事者意識を持っている、ということ。リノベーションまちづくりのためのアイデアを形にし、推し進めるために必要な能力を身につけるためのヒントをオープンに学ぶことができた1日でした。

文:原山幸恵(tarakusa)

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