ReReRe Renovation!

初期投資200万円で小さく始める、
立地に頼らない店づくり

カフェ/HERB+CAFE 

HERB+CAFEってどんなところ?

前田 有佳利

Writer前田 有佳利

ここが、自家栽培のオーガニックハーブが楽しめる「HERB+CAFE(ハーブプラスカフェ)」。一歩中へ踏み込めば、外観とのギャップに驚くはず。足元には木材パレットが敷き詰められ、目の前には大小様々な木材を組み合わせた樹のコラージュの壁とカウンター。その上には、瓶に詰められたハーブが種類ごとにずらりと並ぶ、なんとも圧巻の空間が広がっています。

 

オーナーは、「YOSHIHIRO KONO DESIGN」事務所を営む空間デザイナーの河野芳寛さん。住宅地に建つ工務店跡を初期投資200万円で約2年間掛けて、ほぼひとりでリノベーション。空間デザイン業と兼業して自ら栽培したハーブを用いたカフェは、県内外からこぞって人々が訪れるほどの人気店になっています。

 

上)「HERB+CAFE」の店内。戸を開けると、外観からは想像出来ない空間が広がっている

下左)看板にはかつて河野さんのお父さんが営んでいた「河野工務店」の文字が。あえてその面影を残したのだそう

下右)オーナーの河野さん。人々に喜んでもらえるものをアイデアと工夫で生み出すことに余念がない(撮影:すべて前田有佳利)

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HERB+CAFEができるまでのストーリー

STEP 01 こんな場所から始まった

亡き父が遺した工務店を拠点に

上)リノベーション前の様子。お父さんが長年集めていた大小様々な木材が山ほど積まれていた(撮影:河野芳寛)

「HERB+CAFE」の物件は、河野さんがまだ幼い1980年頃に建てられたもので、かつて亡くなったお父さんが工務店を営んでいました。最初は1階を作業場に、2階を自宅兼事務所として家族で暮らしていた時期もあったそう。その後、進学を機に河野さんは地元を離れ、大阪で暮らし始めます。

卒業後は、大阪の建築設計事務所に勤務。日々の通勤の途中で前を通り掛かる百貨店のウィンドウディスプレイを眺めるうちに、「限られた空間の中でアイデアと工夫を凝らし、新たな世界をつくる。これぞ究極の仕事だ」と思うように。そして空間デザインの道を究めるため、21歳でオーストラリアのメルボルンへ。現地で語学勉強をしながら飛び込み営業をし、各店舗のディスプレイをキャンバスに次々と独自の作品をまちに送り出し、評判を呼びました。

帰国後は、ディスプレイ企画を行う会社に空間デザイナーとして就職。その後、独立して「YOSHIHIRO KONO DESIGN事務所」を設立。そして2010年、地元の有田川町へ拠点を移し、家族の思い出が詰まった工務店の跡地と畑を継ぐことになったのです。

STEP 02 事業スタート

はじまりはハーブ畑から

上)遠くの山々を借景に、美しいオーガニックハーブ畑でお茶を楽しむ空間を設置した(撮影:河野芳寛)
下左)上空から見ると、ハーブ畑は見事なグリッド状に。常にデザインに抜かりがない(地図データ: Google、DigitalGlobe)
下右)手つかずになっていた実家の畑を再生。ハーブは苗ではなく種から育てるという徹底ぶり(撮影:河野芳寛)

当初、工務店は「YOSHIHIRO KONO DESIGN事務所」として、あえて旧看板を残し、そのまま倉庫兼事務所として使うことに。畑はというと、高齢の母の体力では管理が難しかったため、なかば放置状態。「自分がなんとかしなくては」と、活用方法を模索しはじめます。

もともと、有田川町は果物や野菜の栽培が盛んに行われている地域のため、二番煎じでは競合優位性が持てません。「温暖な気候に適し、かつ通年一定して取り扱えるものはないか」と周辺エリアをリサーチしたところ、ハーブ畑がないことに気が付いた河野さん。これならば、と「Herb+」を立ち上げ、オーガニックハーブの栽培を開始しました。

毎朝早朝に起床しては、本から得た知識をもとに試行錯誤を繰り返し、種から丁寧に育てていく日々。育ったハーブは、オリジナルデザインのパッケージに包み、商品化して委託販売。デザイン性の高さから購入者が増え、味の美味しさからリピーターが増え、だんだん認知が広がります。イベント出店の誘いが掛かるようになり、DIYで制作したリアカー式屋台でハーブティーを販売したところ、そのスタイルがさらに注目を集めました。

そのうち、イベントに訪れるお客さんたちから「お店はどちらですか?」と聞かれるように。ニーズを感じ、「そんなに言ってくださるなら……」と、店を持つことを考えます。しかし、河野さんにとって飲食業は初の分野。まずは自身の適性を測るため、無理のない範囲で実践しようと取り組んだのが、ハーブ畑で開催する1ヶ月間限定の屋外カフェ(予約制)でした。

屋台やテーブル、椅子、そして屋根などは全て河野さんの手づくり。以前イベントで出店した際につくったものを一部流用しつつ、1週間ほど掛けて制作したのだそう。

メニューは、2種のデザートプレートとハーブティーの飲み放題でひとり2,000円ほど。目の前に広がるハーブの摘み取り体験も料金を設定して実施したところ、瞬く間に人気に。2〜3組の予約が連日続き、合計で約50組が訪れ、今でも「またやらないの?」と再開の希望が出るほど、大反響の企画となりました。

STEP 03 店舗をつくる

2年間で200万円。
完全セルフリノベーション

上)カウンターには4種類ずつブレンドしたハーブがずらりと並んでいる
下左)床はリサイクルの木材パレットを使用。均等についたドラム缶の跡も良い味。原状復帰もすぐ可能なのだそう
下右)天井からゴム紐で吊るされたパッケージはお店のメインディスプレイに(撮影:すべて前田有佳利)

屋外カフェで確かな手ごたえを感じ、店づくりに踏み切った河野さん。当初はイベントでのスタイルそのままにハーブ畑の横に店を構えたいと考えましたが、畑周辺は水回りの設備が備わっていないため、初期投資費用が抑えられず断念。ならば、父や家族の思い出が詰まった工務店の建物を活かせないだろうか? そんな想いから、河野さんのリノベーション生活がスタートしました。

田舎の住宅地のど真ん中。最初はこんな場所で人が訪れる店がつくれるのか……と不安な気持ちもあったそうですが、「どんな場所でも可能性はある。ロケーションに頼らずとも、新たな世界を生み出すことで人を呼び込むことが出来るはず」と、自身の経験則を信じることに。お父さんが各現場から集めに集めた山積みの木材を使用して、一つひとつ整理整頓するように、壁やカウンターをしつらえました。

本当に大切なものは自分でやろうと、作業はほぼひとり。自分が納得のいく状態になるまで、寒い冬の日も暑い夏の日も、シャッターという幕は閉じたまま。リサイクルの木材パレットを使ったり、軽トラの荷物を結ぶ用のゴム紐を割いて装飾として使ったりと、お金ではなく、時間を掛けて工夫しながら進めました。そうして費やした年月は約2年。初期投資は、椅子や机の材料費から一番高かった空調90万円を含めても総額約200万円というから驚きです。

そして、ついに2014年10月、お父さんへの敬意を込めて全力で向き合った空間「HERB+CAFE」の幕があがりました。河野さんが生み出した独自の世界観とハーブの美味しさから、またすぐ話題を呼び、今では県内外から1日平均30名、土日なら50名が訪れるほどの人気店になっています。

STEP 04 広報・PR

フォロワーを増やす仕掛けづくり

上)ハーブサラダプレート1,200円。イタリアンパセリやパクチーなど、様々なハーブが贅沢に盛り付けられている
下左)ハーフ&ハーフピザ1,200円。4種のテイストから2種選択。味噌とトマト、鰯のオイルサーディンなど。ボリューム満点
下右)本日のケーキプレート600円。早朝に起きて、河野さん自身で手づくりしている(撮影:すべて前田有佳利)

ハーブの栽培も、カフェのリノベーションも、ほぼひとり。カフェのピークタイムだけ、お母さんがサポートで入ることもあるそうですが、運営に関するほとんどの作業は河野さんが担当。そこには、ひとりだからこそ考えついた、お客さんを味方にする”仕掛け”が散りばめられていました。

例えばランチプレート。一般的な飲食店で見かけるプレートは、お皿の片隅にサラダが乗っていることが多いのですが、「HERB+CAFE」では山盛りのハーブサラダが登場します。中央にはスパイスカレーとライスボールがあり、その姿はまるで緑の巣に守られる鳥の卵のよう。プレートがやってくると、どのテーブルでもユーモアのある見た目に惹かれ、SNS投稿用の撮影会が始まります。

さらに、販売用のハーブのパッケージには種類ごとに番号が記されていて、お土産としてだけでなく、友人の誕生日祝いに数字を組み合わせて購入する人も多いのだとか。

このような少しのアイデアと工夫が、お客さん自身が宣伝部長となって、どんどん魅力を発信してくれる仕掛けになっているのです。

STEP 05 挑戦を続ける

無理な投資はせず新たな場をつくる

左)オーガニックハーブは、シーズン時は40種類にもなるそう(撮影:前田有佳利)
右)人気メニューの「フレッシュハーブティー」。摘み立てを贅沢にそのままいただく(撮影:前田有佳利)

「HERB+CAFE」の開店後も、無理な投資はしないというスタンスを徹底してきた河野さん。銀行や行政から一切お金を借りることなく、空間デザインの仕事と兼業しながら常にマイナスにならないよう運営しています。

今後の展開を尋ねてみると、蓄えの一部を資金源に人が集まる場を新たにつくりたいと考えているのだとか。最初の一歩は無理のない範囲で小さくはじめ、着実にフォロワー数を増やしてから、資金が貯まったところでもう一段上のステップに進む。アイデアと工夫を凝らしながら、普段の暮らしをより心豊かにデザインする河野さんの「プラス」の挑戦はこれからも続きます。

前田 有佳利

Writer

前田 有佳利

ゲストハウス紹介サイトFootPrints編集長。起点分析家のフリーライター・イベントデザイナー。最高の仲間×旨い飯×心地よい音楽を愛でる1986年の和歌山市生まれ。京都・東京・大阪を経て、Uターン移住中。

カフェ

HERB+CAFE

2017.7.24更新

  • 住所

    和歌山県有田郡有田川町徳田223-1

  • TEL

    0737 23 7551

  • URL

    http://herbpurasu.tumblr.com

  • OPEN

    11:00~17:00(L.O. 16:30)
    定休日:月毎に変更

  • 運営

    Herb+

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