ReReRe Renovation!

転貸しだから生み出せる、
カスタマイズ費用と自由な暮らし

カスタマイズ賃貸/目白ホワイトマンション 東京都豊島区

目白ホワイトマンションってどんなところ?

馬場 未織

Writer馬場 未織

入居者がDIYできるカスタマイズ賃貸にしたら、たちまち満室に。

 

築45年の目白ホワイトマンションは、JR目白駅から徒歩10分のところにありながら、13室中6室も空き部屋のままでした。その中の1室のリフォームを依頼されたらいおん建築事務所の嶋田さんは、1室をキレイにしても根本的な空室の解消にはならないと、内装を自由にカスタマイズできるマンションにしてみたら?と提案。施工はDIYを基本としつつプロを入れたチームで取り組み、入居者とオーナーの初期費用の負担を軽減するしくみをつくりました。

最初の借り手となった竹沢さんは、仲間と楽しみながら部屋をつくり替えました。竹沢さんの部屋をスタートに次々と部屋をカスタマイズしたい人が入居し、たった4ヶ月で満室に。”ぼろぼろな部屋がDIYで生まってあっという間に満室に!”とメディアで話題にもなりました。賃貸でも豊かな暮らしが可能だと身をもって示したパイオニア物件として、目白ホワイトマンションは注目され続けています。

 

写真上)完成後の竹沢さんの部屋。beforeがまったく分からないほど素敵な仕上がり。
写真下)『memento』のDIYワークショップの一コマ。仕上げを剥がして見えた構造壁には施工チームの名前が記されている。目的を共有し、みんなで作業を楽しむ現場だ。(撮影・竹沢愛美)

竹沢さん作業チーム

目白ホワイトマンションができるまでのストーリー

STEP 01 空き室だらけのマンションを全室満室にしよう!

まずはお化け屋敷のような部屋から挑戦

目白ホワイトマンションの外観とDIY前の部屋の様子。外観はバルコニーの手すりなど魅力的なデザインで、半世紀前の良き風情が感じられる。しかし、壁紙は汚れて畳はささくれだっており、オーナーが当初、見せたがらなかったほどだ。(撮影:竹沢愛美)

JR目白駅から徒歩5分。目白通りと明治通りに挟まれたとても閑静な住宅街に、目白ホワイトマンションは佇んでいます。保育園のママ友から「父の持っている築45年のマンションが空き室だらけで。入居者が見つかるようなリフォームをお願いしたい」と相談された嶋田洋平さんが見に行くと、風情のあるヴィンテージマンションにも関わらず13部屋中6部屋も空き室になっていました。

内装は通り一遍の”原状回復”リフォームが施され、外観のイメージとはかけ離れた無個性なものでした。しかし、「ボロボロのお化け屋敷ですから」とオーナーが見せたがらない部屋を無理矢理見せてもらった嶋田さんは「目白ホワイトマンションのリノベーション第1号はこの部屋にすべきだ!」と直感しました。最もオンボロな部屋が素敵に生まれ変わった時の宣伝効果を見込んでのことです。

入居の打診をしたのはインテリア系ウェブショップで働いている竹沢さん。内覧後、すぐ入居を決めた彼女はボロさに驚くどころか「どのくらい変わるかなあ、どこを残そうかなあ」と心底ワクワクしたそうです。インテリア大好きな竹沢さんの住んでいた賃貸住宅は、内装に手を入れさせてもらえなかったのです。

STEP 02 欲しい暮らしをつくる敷居をどう下げるか

資金面でも技術面でもチームを組み、みんなでメリットを分け合う

オーナー、らいおん建築、住人がみんなでお金を分担し、家賃で回収する。誰も損をしないしくみ。(「ぼくらのリノベーションまちづくり」嶋田洋平著(日経BP社)より)

嶋田さんは「住人が住みたい部屋をみんなでつくる」ためのチームを立ち上げました。メンバーは住み手の竹沢さん、建築家の嶋田さん、そして目白ホワイトマンションのオーナーさん。このチームで作戦会議を開き、改装の資金は三者が出し合うことに決めました。フルリノベーションに初めて挑戦する竹沢さんの負担を軽くするためです。いろいろと見積もった結果、オーナーさんが100万円、嶋田さんが経営する「らいおん建築事務所」から50万円、竹沢さんが50万円を負担することにしました。

それぞれの費用はどのように調整するのでしょうか。まず、らいおん建築がオーナーからこの部屋を月額3万円で4年間借ります。そして、竹沢さんに最初の2年は月額5万円、3年目以降は月額7万円で貸すことにしました。最初の2年の差益(2万円×24ヶ月)でらいおん建築の初期投資50万円は回収できます。その後は利益になる仕組み。竹沢さんにとっても最初2年は格安の家賃で住め、オーナーは3年弱で100万円の投資を回収できる上に、長年、空室だった部屋が埋まることで確実なプラスが出るわけです。

また、施工作業には”お客さんと一緒に手づくりで家をつくる”というコンセプトの「HandiHouse project」の中田さんも引き込み、設計から施工までを嶋田さん、竹沢さんみんなで一緒に進めることになりました。さらに、その作業の中でDIYでできそうなところはワークショップ形式にしてみんなでわいわい進めることに。素人の手仕事ですから失敗はつきものですが、それが友達の仕業だったらみんなで笑っていい思い出になる。一人でがんばって”DIY鬱”になる人もいるそうですから、作業を楽しむ仕掛けは大事です。

STEP 03 DIY好きじゃなくてもトライ!

やってみたからこそ分かることがたくさんある

プロの手ほどきを受けながらのDIYワークショップ。日当たりのよい屋上で、みんなでサッシを塗る。みんなでやった床張りは想像以上に大変な作業だと発見も。「ちっちゃい工事を請けてくれる大工さんがいるといいな。プロの細やかなサポートがあると、怪我をするリスクも減り、素材の特徴や作業のコツを教えてもらえるので楽しかったです」(撮影・竹沢愛美)

竹沢さんはインテリアショップで働いていることもあり、ペンキ塗りや棚つけなど基本的なスキルを持っていたため「DIY女子」と呼ばれることもあります。でも本人は、とりたたてDIYが好き、というわけではなく、やることに抵抗がないくらいと言います。「でも、いざ自分でやってみるといろいろ気付くことがあるんです。改めて職人さんの技に感じ入ったり、感謝の深さも変わります」。

また、具体的に作業の大変さの程度が想像できるようになると、何もかも自分でやるのではく、DIYをする部分、しない部分を決めていくことができるようになります。「だから私、今度の床張りはプロに任せようかと思って(笑)」。自分で手掛けて愛着が深まりつつも、DIYでの工具道具を揃える費用や、職人さんの仕上がりの綺麗さ、作業の早さを比較してうまくコントロールすることが重要です。

ちなみに、真っ白にリフォームされた部屋よりも、手を加えていないボロボロな状態の方が都合がいい、ということもあるようです。「窓枠や長押などに月日を経た良さが残っている方が魅力的です。リフォームしてしまうと、それらがすべて失われてしまいますから」と竹沢さん。

STEP 04 他の空き部屋4室も、4ヶ月で満室御礼

DIYをきっかけに暮らしに広がりが生まれる

竹沢さんの雰囲気そのままに、居心地よさそうな部屋ができ上がった。白い壁にナチュラルなインテリアが生きている。(撮影:竹沢愛美)

竹沢さんの抜群のセンスで生まれ変わった部屋は、多くのメディアに紹介されました。また、他の4つの空室もDIY可能な物件を集めたサイト『DIYP』で募集した相乗効果で、次々に問合せが入り4ヶ月で満室に。当初、嶋田さんが描いていた計画通りの反響が得られたという次第。集まってきた人たちは竹沢さん同様、暮らしに対するセンスとパワーのある人たちばかりでした。

欲しい暮らしは人それぞれですから、つくる空間は十人十色。お互いの部屋を行き来するのが実に楽しく、会話も広がります。原型がまったく想像できないほど様変わりした部屋は、設計士と現場監督の夫婦の部屋だったと分かり、なるほどと膝を打つことも。中には「やってみたら、ここを収めるのは無理でした!」とつくりかけのような状態でフィニッシュしている部屋もありますが、「でも他のとこはうまくいってるの」と笑う姿にはDIYをとことん楽しんでいる様子がうかがえます。デザインの完成度が価値なのではなく、つくることで住人が得た暮らしの広がりこそが、価値だと気付く瞬間です。

STEP 05 住み手が変わったなら、オーナーも変わろう

みんなが求める賃貸住宅は、新しさではなく「豊かさ」かもしれない。

屋上で開かれた住人達のイベント。友人も呼んで賑やかに。こうしたイベントがきっかけで住人同士の輪も広がる。目白の「つくつくさんぽ市」に出かけるため鬼子母神の参道を歩く(撮影:竹沢愛美・馬場未織)

目白ホワイトマンションは、住人同士の仲がいいのが特徴です。仕事から帰ったら隣人さんの家でごはんを食べさせてもらっちゃった、屋上でお月見の会をした、など暮らしの中で何となく一緒に過ごす時間も多いそう。DIYをする住人のところに手伝いに行くなどする中で、入居時にはすっかり打ち解けているというプロセスがあるからです。

「他にも、稼働率が上がる、入居者が部屋に愛着を持つので長く住んでもらえる、築年数が古いということが負い目ではなく魅力になるなど、カスタマイズ賃貸はオーナーに多くのメリットをもたらすはず」と、身をもってその良さを実感する竹沢さんは力説します。

目白ホワイトマンションが先行事例となり、DIY可能な賃貸住宅を求める人が増えています。しかしまだ、カスタマイズ賃貸というしくみを受け入れるオーナーは少ないようです。「わたしたちはカスタマイズ賃貸の楽しさ、豊かさを知ってしまった。もう、後戻りはできないんです」という竹沢さん。リテラシーの高い住み手が増えていく中、その需要に応える物件が増えていく未来は、そう遠くないでしょう。

 

賃貸だとインテリアにこだわることができないどころか画鋲すら打てない、だったらせめて新しい物件の方がいい、ということで築古物件の需要が減っているのが今までの日本の賃貸住宅事情でした。

でも、住み手が成長すれば、市場も変わるはず。原状回復によって最低限住める部屋を提供するのではなく、賃貸なのに住むのがこんなに楽しい!と思える場の提供へ…そう思ってみると、日本中に住み手の求める中古賃貸マンションがあることに気付きますね。オーナーさんたち、変わるなら、今です。

馬場 未織

Writer

馬場 未織

東京都生まれ。1998年日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所勤務を経てライターへ。プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹で「平日は東京、週末は南房総」という二地域居住を実践。農家や建築家、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共にNPO法人南房総リパブリックを設立、理事長を務める。親子で自然体験学習をする「里山学校」、東京で産直野菜料理を提供する「洗足カフェ」(目黒区~2014年)、里山拠点づくり「三芳つくるハウス」、市内全域の空き家調査など手掛ける。著書に『週末は田舎暮らし』(ダイヤモンド社)、『建築女子に聞く 住まいの金融と税制』(学芸出版社)など。

カスタマイズ賃貸

目白ホワイトマンション

2017.1.19更新

ページトップへ