ReReRe Renovation!

まちづくり会社の稼ぎを担い、
まちもゲストもwinする仕組み

農園レストラン/石窯ポポロ 和歌山県和歌山市

石窯ポポロってどんなところ?

矢嶋 桃子

Writer矢嶋 桃子

リノベーションスクール@わかやまの記念すべき第一号目の事業化案件である「石窯ポポロ」。今年の2月のオープン以来、無農薬野菜や和歌山の新鮮食材をたっぷり使った料理や石窯ピザを提供し、地元でも評判のお店です。運営するのは、「NPO法人にこにこのうえん」。有機無農薬の野菜を作っているほか、子どもの農園体験や若者の社会参加支援をしているNPOです。

 

代表の吉川誠人さんは和歌山市で生まれ育ち、町の変化も見てきました。だんだんと町がさみしくなっていくのを感じながら、自分にもできることはないかと、リノベーションスクールに参加したそうです。

 

和歌山市は人口減少に加え、郊外にできた新興住宅地やショッピングセンターなどの影響で中心部の空洞化が進んでいます。中心部に無料の駐車場が少ないことも、車社会の地域において客離れを引き起こしている要因の一つです。

 

「自分の店のだけでなく、エリア価値を上げていきたい」と考える吉川さんは、石窯ポポロの他、マーケット事業の運営や、家守会社「株式会社紀州まちづくり舎」も立ち上げ、精力的に活動しています。

 

写真)5段窯を備えた石窯ポポロ。石窯ピザだけでなく、手づくりのお菓子やパンなどもとても美味しい。昼はランチも提供(撮影:矢嶋桃子)

IMG_6581

石窯ポポロができるまでのストーリー

STEP 01 こんな場所から始まった

まちの中心部なのに、
人通りもまばらなシャッター商店街

上)1980年代頃まではにぎわいのある商店街で「ハレの日」の買い物と言えばみながぶらくり丁を訪れたと言う。商店街の顔ともいえる入り口の店舗がすでに空き店舗となっている。(撮影:矢嶋桃子)
左下)スクール当時、2~3階のテナントはまったく空いていたポポロビル。事業提案した1階は現在、場外馬券場の駐輪場に。(撮影:矢嶋桃子)
右下)リノベーションスクール@わかやま第一回での最終プレゼン動画。(撮影:リノベーションわかやま)

JR和歌山駅から歩くこと約15分。和歌山城の北側に位置し、和歌山市の中心市街地としてかつて繁栄を極めたアーケード街、ぶらくり丁商店街が見えてきます。

「ぶらくり」とは、ひっかける、吊るすなどを意味する「ぶらくる」を語源とし、間口の狭いお店の軒先に商品を「ぶらくって」売っていたことから名づけられたとも言われています。百貨店や映画館がいくつもあり、大阪を始め近隣の町からも買い物客でごった返しまっすぐ歩けないと言われたほどのぶらくり丁 も、現在は映画館も百貨店も撤退。H22年4月の調査では27.94%のお店が閉まり、いわゆるシャッター商店街となっています。(*1 まちづくり推進課調査)

「石窯ポポロ」はそんなぶらくり丁の真ん中に2015年2月8日にオープンしました。リノベーションスクールで吉川さんたちのユニットが与えられた物件は、地上6階、地下1階の鉄筋コンクリート造の「ポポロビル」でした。吉川さんたちは、ぶらくり丁商店街を「消費の場から創造の場へ」と位置づけ、ポポロビル1階に、石窯を使ったピザの手づくり体験や、手づくり工房、託児スペースの入居を提案しました。

STEP 02 現在の物件との出会い

当初の物件は駐輪場に!現在のオーナーと出会い無事にスタート

上)オーナーはぶらくり丁の老舗喫茶店「インターラーケン」の店主、成瀬鋼さん。「石窯ポポロ」とは隣同士(撮影:矢嶋桃子)
左下)元々布を販売するお店だったため水回り設備も不十分で、飲食店の設備に改修するための費用はそれなりにかかった
右下)壁の漆喰塗り、天井に和紙を貼るワークショップを開催(撮影:(下すべて)石釜ポポロ)

リノベーションスクールの後、吉川さんたちは実証実験として、2014年5月にぶらくり丁で「ポポロハスマーケット」を開催します。1万人の集客があり、イベントは大成功。10月にも開催した後、ポポロビルのオーナーに事業提案をします。しかしすでに、ポポロビルは場外馬券場の駐輪場として使われることが決まっており、計画は振り出しに戻ります。

そんな時、知り合いから紹介されたのが、ぶらくり丁商店街組合の前理事長、成瀬鋼さんでした。リノベーションスクールでの吉川さんたちの提案も、ポポロハスマーケットも知っていた成瀬さんから、自分の店の隣の空き店舗で事業をやらないかと申し出があり、ついに、「石窯ポポロ」がオープンすることとなりました。

資金は初期費用として450万円ほど必要でした。開店した後、営業しながら設備に追加投資したため最終的に500~600万円ほどになりましたが、約半分は自分たちでまかなっています。内装はワークショップ形式にして募集。多くの人の協力で作り上げられました。

STEP 03 エリアへの広がり

店舗運営にとどまらず、マーケット事業を展開

「 ポポロハスマーケット まちなかフェスティバル」の様子。上)ぶらくり丁でのポポロハスマーケット。
左下)市堀川ではパドリングも。
右下)和歌山市駅前ではグリーングリーンプロジェクトが展開。道路に芝生を敷いてみる社会実験が行われた。(撮影:すべてポポロハスマーケット実行委員会)

「石窯ポポロ」オープン日には、「ポポロハスマーケット」も同時開催し、多くの人で商店街がにぎわいました。以来、ポポロハスマーケット毎月第2日曜日に定期開催されています。手づくり雑貨や有機野菜、こだわりのフードやドリンクなど「手作り」「ロハス」などをキーワードにしたお店が出店し、ぶらくり丁商店街を埋め尽くします。

「最初はマーケットを定期開催するつもりはなかったんです。でも、まちづくりや事業開発に携わる人のためのブートキャンプに参加して、定期マーケットも事業として視野に入れるようになりました」と吉川さん。和歌山でのスクールの後も、北九州でのリノベーションスクールを受講したり、自身で勉強を重ねてきました。

最初は30店ほどだった出店者も徐々に増え、現在は約100店が出店します。個人で作っている人などの参加のハードルを下げるために、チャレンジブースという割安な出店料も設定。出店者のリピート率は高いそうです。

毎月6000~8000人の集客があり、イベントとしての認知度も高まっています。9月には「ポポロハスマーケット まちなかフェスティバル」と題して、市堀川周辺の水辺エリアや南海線の和歌山市駅前まで拡大版のマーケットを開き、のべ1万6300人が和歌山市のまちなかを回遊、楽しむイベントとなりました。

STEP 04 家守会社の設立

「紀州まちづくり舎」を立ち上げ、空き家事業を引き受ける

石窯ポポロの2階は今後宿泊利用ができるように整備している。(撮影:矢嶋桃子)

実は吉川さん、「石窯ポポロ」のオープンに先立ち、2014年10月に家守会社「紀州まちづくり舎」を設立しています。メンバーにはリノベーションスクールで共に学び、関わった仲間も加わっています。

「石窯ポポロ」の物件も、オーナーとの賃貸契約は紀州まちづくり舎が結び、にこにこのうえんにサブリースする形で運営しています。紀州まちづくり舎からオーナーに支払う家賃と、商店街組合へ支払うアーケードの使用料を合わせた金額が、毎月の固定支出です。石窯ポポロの建物は2階建て約120㎡の広さですが、相場よりも安い賃料で借りることができています。

石窯ポポロからは売り上げの10%を家賃として紀州まちづくり舎に支払うことにしており、石窯ポポロが売り上げるほどに紀州まちづくり舎の収入もアップするため、まちづくり舎で立ち上げのサポートやプロモーションも行います。

STEP 05 他の団体との連携

次々に生まれる新しい試み。横の連携を取りながら相乗効果を狙う

上)マチドリの一カ所。ここはハンバーグの櫻井さんのサンドイッチ販売が。ぶらくり丁商店街でも3か所でこの日のみのショップが開かれた。
左下)ポポロハスマーケットは実行委員会形式で行っている。BLAPの小賀さんも委員として関わっている。左からBLAP小賀善樹さん、竹家正剛さん、紀州まちづくり舎長尾沙菜美さん、三浦研祐さん。
右下)取材の日はちょうど和歌山大学観光学部の学生たちが石窯ポポロの前で「お月見カフェ」を行っていた。(撮影:すべて矢嶋桃子)

「リノベーションスクールではよく“エリア価値を上げる”という言葉が聞かれましたが、それは本当に大事です。最近では自分たち以外の人も新しく商店街でイベントをやり始めてますが、エリア価値が高まって人が集まることでやっぱり周辺店舗の売り上げが上がるんですね」と吉川さん。

リノベーションスクール以降、中心市街地の商業エリアでは活発な活動が見られています。第二回リノベーションスクールの受講生たちが立ち上げたBLAP(Build a Livingroom in the Arcade project)はぶらくり丁を自分の家のリビングルームに見立てたイベントを行い、市堀川を始めとした水辺環境の向上を目指すミズベリング和歌山の活動や、和歌山市駅前でのグリーングリーンプロジェクトなど和歌山大学観光学部による研究や実証実験など、それぞれが連携し合って相乗効果を生み出しています。

吉川さんが代表を務める紀州まちづくり舎でも、この9月、手づくりの人たちのチャレンジショップをまちなかの空き店舗や活用されていない空間で展開する「マチドリ」という2日間のイベントを行いました。

このように、何かやりたい人と、場をつなぐ取り組みの積み重ねが、いずれ商店街のシャッターを次々と開けていくことにつながるのかもしれません。

 

取材に伺った日はちょうど和歌山国体の日と重なり、まちなかはイベントが盛りだくさん。ポポロも深夜まで楽し気な声が聞こえていました。この賑わいがかつての和歌山市にあったことを考えました。地元出身の吉川さんや仲間の皆さんが、本気で和歌山をどうにかしたいと動く姿を間近で見て、きっと和歌山はおもしろくなるぞ、という予感がしています。

矢嶋 桃子

Writer

矢嶋 桃子

編集者・ライター。東京の下町、谷中で生まれ育つ。地域の子育てコミュニティ「谷中ベビマム安心ネット」の運営や、まちのシンボルツリーを守る「谷中ヒマラヤ杉基金」の理事・事務局長。2児の母。

農園レストラン

石窯ポポロ

2016.3.30更新

  • 住所

    和歌山県和歌山市本町1丁目27-1

  • TEL

    073-499-4354

  • URL

    http://www.nikonikonouen.com/origin

  • OPEN

    月〜木・日 11:00~22:00、金・土・祝前 11:00〜23:00 不定休

  • 運営

    にこにこ農園

ページトップへ