ReReRe Renovation!

通りにソファを持ち出して、
商店街をリビングルームに

商店街の活性化/BLAP 和歌山県和歌山市

BLAPってどんなところ?

矢嶋 桃子

Writer矢嶋 桃子

BLAPとは、Build a Livingroom in the Arcade projectの略で「商店街アーケード リビングルーム化プロジェクト」をさします。第2回リノベーションスクール@わかやまから生まれた事業です。これまで2015年8月と10月にぶらくり丁商店街でクラフトビールとナイトマーケットを核にしたイベントを行っています。BLAPのメンバー9人中7人がリノベーションスクールのユニット生というから、その団結力に驚かされます。

 

イベントは実行委員会形式で、委員長を務める小賀善樹さんは、自身が建築設計事務所を営む身でありながら、建物単体のリノベーションではなく、商店街という、「まち」をどう変えていくかという方向に、仲間と共に舵を切っています。

 

「商店街を、心地よいリビングルームに」というコンセプトが生まれた背景、実際に展開してみることで見えてきたことなどを、BLAPのメンバーである小賀善樹さん、竹家正剛さん、武内淳さんに伺いました。

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BLAPができるまでのストーリー

STEP 01 こんな場所から始まった

衰退する町をみながら、モヤモヤしていた

左)BLAP実行委員長の小賀善樹さん、右)ぶらくり丁商店街。現在はシャッター商店 街となってしまっている(撮影:矢嶋桃子)

かつては住友金属工業(現・新日鉄住金和歌山製鉄所)の工場進出による「企業城下町」として繁栄していた和歌山市。BLAPがイベントを展開するぶらくり丁商店街も、丸正百貨店、大丸、ビブレなどの百貨店があり、ハレの日に訪れる場所として賑わいを見せていました。しかし工場機能の移転や生産量の縮小によるダメージもあり、町は徐々に衰退を見せ始め、人口減少と市中心部の空洞化が進みます。県外への人口流出率も高いと武内さんは言います。 

実は小賀さんも竹家さんも武内さんも和歌山県生まれ。竹家さんは和歌山市役所、武内さんは和歌山県庁に勤めています。それぞれ、子どもの頃にまだぶらくり丁が賑わっていた記憶を持ち、さびれていく和歌山の姿を見ながら、自分に何かできることはないのかと悶々とした思いを抱えていました。

「和歌山は“モヤモヤ病”の人が多いと思います。リノベーションスクール参加者も、他のエリアでのスクールは色々な県から受講生が集まってくるのに、和歌山は8割が和歌山県人なんですよ」竹家さんは言います。竹家さんや武内さんは公務員という立場ではありますが、プライベートでリノベーションスクールに参加。他の地方の講座や勉強会にも積極的に顔を出し、学びを得ています。

STEP 02 スクールでの事業提案内容

通りに賑わいを!
アーケードの下にリビングを!

上)ぶらくり丁商店街にある旧「えり弥」。取材日はちょうど紀州まちづくり舎のチャレンジショップ企画「マチドリ」に会場提供されていた(撮影:矢嶋桃子)
左下)第2回リノベーションスクール@わかやまの最終プレゼンの様子(撮影:小賀芳樹)

リノベーションスクールで小賀さんと竹家さんたちのユニットが与えられた物件は、ぶらくり丁にある元呉服屋「えり弥」。1951年築の木造2階建ての建物です。小賀さんたちは、えり弥一軒だけで事業をするより、閑散とした商店街をブランディングすることで通り自体に賑わいをもたらそうと考えます。

 「天候に左右されない商店街のアーケード下に、人々のコミュニケーションの場である“リビング”を作ろう!」ここに、「商店街アーケード リビングルーム化プロジェクト」が生まれました。しかしスクールの3日間で詳細は詰め切れぬまま。最終プレゼンも満足のいくものではなかったと小賀さんは語ります。「学んだことを出し切れなかった。そのことがずっと悔しさとして残っていました」

スクール後、事業提案の中に組み込んでいたナイトマーケットの企画を小賀さんが進めることになりました。「家のリビングで何をしているか考えたら、ソファでテレビを見ながらビールを飲んでくつろいでる。それならやっぱりビール、しかも和歌山ではまだあまり展開されていなかったクラフトビールのイベントをしようと思いました」

STEP 03 いざ、実施へ

ぶらくり丁商店街でしかできない、
「風」「緑」「音」のリビングをつくる

上)「CRAFT×暮らふと BEER FES vol.1」の様子。商店街にソファを置いた(撮影:BLAP実行委員会)
左下)火災など有事の時以外で開けることのない商店街のアーケードの屋根を、今回初めて開けた。商店街組合の方たちはハラハラドキドキ。「でも、アーケードが開いて星空が見えたら気持ちいじゃないですか」と小賀さん。この柔軟な考え方と、やってみようぜというポジティブな姿勢といったら!(撮影:BLAP実行委員会)
右下)全国的に流行しているクラフトビール。実は小賀さんが大のビール好き。第1回目は5つのブリュワリーが出店した(撮影:BLAP実行委員会)

しかしクラフトビールの生産者とのパイプのなかった小賀さん。まずはブリュワリーを訪ねるところからのスタートでした。企画書を携え大阪の地ビールイベント、なんばCRAFT BEER LIVEに行き、その場でブリュワリーに交渉したこともあります。京都の大アーケード商店街、京都三条会商店街で行われた地ビール祭りを視察し、その仕組みやノウハウを実行委員長に聞くこともできました。 

ぶらくり丁の「リビング化」については、“ぶらくり丁でしかできないこと”を重視し、「ぶらくる=吊り下げる」というテーマで3つのリビングが作られることになりました。長のれんが揺らぐ「風のリビング」、植栽などをぶら下げ落ち着きをもたらす「緑のリビング」、通りの真ん中にスクリーンがぶら下がってどこからでも映画が見られる「音のリビング」が、商店街220メートルに設けられたのです。

2015年8月29日、BLAP初のイベント「CRAFT×暮らふと BEER FES vol.1」を開催しました。クラフトビールの飲み比べや作家や職人の手づくり作品のマーケット、映画上映など、賑わいは夜まで続きました。約1万2000人の来客があり、地元和歌山や関西の選りすぐりのクラフトビールは早々に完売。嬉しい悲鳴を上げました。

STEP 04 資金調達、事業計画

100% 自前の資金。そして、収益にこだわる
これが、継続させるコツ

上)「風」のリビング、(左下)「緑」のリビング、(右下)浴衣にビールはよく似合う。非常にたくさんの来場者に恵まれた(撮影:すべてBLAP実行委員会)

イベントは大成功に終わりましたが、これはまだ商店街への効果を見るための実証実験に過ぎません。一過性のイベントで終わらせず、この賑わいをどう日常化できるかをBLAPでは模索しています。

「人々が通りでくつろげる“おもてなし空間”をアーケード下に作り、大小のイベントが普段から行われるようになればもっと日常的に人が集まります。そのためには僕たちのイベントもきちんと収益性を考え、事業として継続性を持たせることが大事です」 

資金はすべて自前で賄うことを目指しました。出店料は1店舗3000円で30店舗が出店。企業の協賛金も1社1万円から募り12万円を集めました。それに小賀さん、竹家さん、大硲さんが共同で30万円を出資して、計51万円を原資としました。 

ビールはチケット制にし、その売り上げの一部を実行委員会にリターンする仕組みです。第1回のイベントでは想定以上の集客でビールの在庫が切れてしまい残念でしたが、利益は多くはないものの、黒字で終えることができました。

STEP 05 エリアへの波及効果

まちの中に、いくつもの"くさび"を打ち込みたい

上)BLAPのメンバーも働いているとい うぶらくり丁を出てすぐのところに あるカフェ「PLUG」。まちづくり会社 「サスカッチ」が運営していた「文 具とカフェのお店スイッチ」の跡地 に2014年9月にオープンした
左下)竹家さんは実は市役所で空き家対策を担当している。制度や条例などに詳しい仲間がいるのもBLAPの強みだろう
右下)ぶらくり丁の近辺には少しずつお しゃれな店が増えている。商店街 から少し歩いたところにあるビストロカフェにもイベントのポスターが(撮影:矢嶋桃子)

数年前までのぶらくり丁は、本当にさびれた商店街だったとBLAPの皆さんは言います。それがリノベーションスクール以降、少しずつ新しいお店ができ始めました。そこには、先に事業展開していた石窯ポポロ、ポポロハスマーケットの存在は大きいようです。 

実はイベントの企画の段階では、商店街の店舗の反応はイマイチだったそうです。しかし実際に行ってみると、近くの老舗のおもちゃ屋さんからは、「イベントの時にたまたま来た子どもが常連になってくれた」、飲食店も「イベントの日は過去最高の売り上げだった」などの声が聞かれ、付近の店舗への経済効果も実感しています。 

今後の展開や夢について伺うと、「クラフトビールの専門店がぶらくり丁にできたらいいなと思っていて」と小賀さん。実際、やりたいと言っている人もいるのだとか。空き店舗で始めてくれれば商店街の賑わいに一役買うことでしょう。

「エリア全体の賑わいを作るために、特色のある店を、アンカー、つまりくさびとして打っていくのが僕たちの役割かもしれません。石窯ポポロや紀州まちづくり舎が、ポポロハスマーケットのチャレンジショップ的な手法で商店街のシャッターを開けていくのと分業して、ぶらくり丁の価値を高めることができると思うんです」

 

取材を終えて……

BLAPの皆さんには和歌山市の課題や、最近の動きについてたくさん教えていただきました。スクールの案件以外でも人の動きが活発になっていて、第一回のスクールの後すぐに家守会社「サスカッチ」が設立されたり、不動産業を営むユニット生は空き家相談の窓口を開設したり。案件の成功の如何に関わらず、スクールで生まれた人のつながりが、ユニット生たちの活動を活発にしていることが分かりました。

また、リノベーションスクールが自分たちの意識をガラリと変えてくれたと皆さん口にしていたのが印象的です。町全体という広い視野の中で、自分の仕事やスキルがどう生かせるか考えられるようになったそう。自分自身も、町の姿も変わっていくことが心底楽しそうなBLAPの皆さん。とてもいい顔をしていました。

矢嶋 桃子

Writer

矢嶋 桃子

編集者・ライター。東京の下町、谷中で生まれ育つ。地域の子育てコミュニティ「谷中ベビマム安心ネット」の運営や、まちのシンボルツリーを守る「谷中ヒマラヤ杉基金」の理事・事務局長。2児の母。

商店街の活性化

BLAP

2016.3.30更新

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