ReReRe Renovation!

旅と暮らしが出逢う、まちの新たな拠点

複合施設(ゲストハウス・シェアハウスなど)/RICO 和歌山県和歌山市

RICOってどんなところ?

前田 有佳利

Writer前田 有佳利

RICOは、ゲストハウスなどが一体となった5階建て一棟ビルの複合施設です。和歌山市内に誕生したこの施設、最終的には、1階はレセプション・バー&ラウンジ・コワーキングスペース・シェアオフィス・シェアキッチン、2階はシェアスペースのあるシェア住居、3階4階は共同住居、5階はゲストルーム、屋上は菜園やテント泊スペース、という構想になっています。

 

コンセプトは「Find your Seeds.」。この場所を訪れる人が、他の誰かと空間を分かち合うことで新たな気付きが生まれ、自分の中にある豊かさのタネに出逢えるようにと掲げられたものです。そのためRICOでは、”シェア”の要素がある取り組みを主として選択しています。

 

企画や運営をしているのは、株式会社ワカヤマヤモリ舎(以下「ワカヤマヤモリ舎」)。第二回リノベーションスクール和歌山をきっかけに、遊休不動産の活用による地域活性化を目指して、2015年4月に設立されました。代表取締役 豊田 英三さんが所有する旧事務所兼共同住宅の空きビルを改修。取締役の櫻井 保典さん・宮原 崇さんとともに、実体験をもって多くの打ち手を提唱できるようにと、複合施設というスタイルを一歩目の事業として開始しました。

 

現在、日々の改善を加えながら運営を進めており、1階は2016年度の本格始動を目指しています。改修工事までは、当面はイベントスペースとして活用することで、同ビル内のゲストハウス宿泊者や入居者だけでなく、地域の人たちにとっても広く開かれた場であることを積極的に発信していこうとしています。

01-1

RICOができるまでのストーリー

STEP 01 こんな場所から始まった

昭和44年築の旧事務所 兼 共同住宅
―ビルオーナー 豊田さんの視点―

上)ユタカビルの建つ場所は、豊田さんのお祖父さんがタクシー業を創業した地でもある。写真は創業時の事務所建物。昭和の最盛期、ビル周辺地区には現在より約2.5倍もの人口が暮らし、町は絶えず賑わっていた(提供:豊田 英三)
左下)ワカヤマヤモリ舎 代表取締役の豊田さん。現在のRICO管理人室にあたる2階の部屋で、幼少時代に家族で暮らしていた(撮影:前田 有佳利)
右下)解体途中のビル内。大きな鉄筋コンクリート造で、空きフロアはがらんとしていた(撮影:宮原 崇)

昭和44年に、事務所兼共同住宅として建設された5階建てのビル。名称は「ユタカビル」です。ここは、ユタカビルオーナーで、ワカヤマヤモリ舎の代表取締役でもある豊田さんが生まれ育った場所であり、お祖父さんの代から続くタクシー会社の創業の地でもありました。当時近隣の商店街・ぶらくり丁は常に買い物客で賑わっていました。

「子どもの頃、友人たちと近くの銭湯へ行ってキリンレモンを買って飲みながら帰ったり、土曜には商店街へ出掛けて本やおもちゃを買ってもらったり。そうやって人々の暮らしが集まる町だったんですよ。」そんな思い出の地も今は人通り寂しく、豊田さんが小学校の頃に家庭の事情で一家は引っ越し、ビルの使い道を検討するにあたって入居者の募集もここ3年ほどストップしており、ユタカビルは共同住宅として数名の借り手がいるのみで、約6割が空室となっていました。

ビルを潰すにもお金がかかり、思い出の地を売ってしまうのも悲しいもの。お祖父さんのタクシー業からはじまり今は観光業を広く担う豊田さんの職業柄、「インバウンドに関わりながら町を活気づける場としてこのビルを活かせたら…」という想いがありました。そんな時、リノベーションスクールという活動を新聞記事で知って、行政職員の知人に詳細を尋ね、対象物件として申し込み、自身も受講生として参加することにしたのです。

そして、2014年に開催された第二回リノベーションスクール和歌山。ユタカビルを対象物件として利活用の提案を行うユニットのマスターは、「東京R不動産」メディアの運営やリノベーションの企画・設計を広く請け負う株式会社SPEACの宮部 浩幸さん。サブユニットマスターは株式会社サスカッチの小川 貴央さんです。のちに結成されるワカヤマヤモリ舎の代表となる豊田さん、取締役の櫻井さんと宮原さんも、そのユニットのメンバーでした。

STEP 02 計画を練る

どう計画する?どう進める?
ー現場を担うGM宮原さんの視点ー

上)株式会社ワカヤマヤモリ舎 取締役・RICOジェネラルマネージャー宮原 崇さんと、女将として一緒に現場を守るマネージャー橘 麻里さん(撮影:前田 有佳利)
左下)2013年のリノベーションスクール修了時、ユニットメンバーで撮影した集合写真(撮影:リノベーションスクール)
右下)「第二回リノベーションスクール和歌山」での公開プレゼン動画

ユタカビルの新たな活用方法として、ユニットメンバーは「ゲストハウス」を提案。以前、ベトナム・ホーチミンを旅行した豊田さんが、飲食・宿泊併設のバックパッカー街の賑わいからインスピレーションを得ていたこと、櫻井さんが和歌山県田辺市ですでにゲストハウスを運営していたこと、宮原さんがいつか設計事務所と併設してゲストハウスを運営したいと考えていたことなど、これらの想いや状況が重なり、プランはどんどん固まっていきました。

スクール後、監査役にシェアキッチンPLUGの小泉 博史さんを迎え「株式会社ワカヤマヤモリ舎」という屋号で家守会社を設立しました。さて、ここまでは順調そうに見えますが、当然ながら多くの苦労もありました。豊田さんと櫻井さんは別会社の経営者でもあり、現場の実務は宮原さんの役目。仲間が見つかるまで、事業計画・建築・広報など現場における多くの役割を担うことになりました。

宮原さんは立ち上げ当初を振り返って、「豊田、櫻井も忙しい合間を縫って、資金面や経営面の調整を行っています。そういった中で中心的な役割を担えることは大きなチャレンジであり、有難いこと。ですが、はじめは実務で一緒に動ける新たな仲間になかなか巡り逢えず苦戦し、不安で挫折しそうになることもありました」と、話します。

しかし、宮原さんが諦めずに周囲に声を掛け続けたことで、だんだんと仲間が集まっていきました。PLUG小泉さんや建築設計事務所the office、和歌山大学の観光学部生など、どの人も宮原さんの真剣な想いを受けて、一緒に知恵を振り絞ってアイデアを出してくれました。そして2015年夏頃、”女将”的存在となる橘さんが加わり、現場も少しずつではありますが動きはじめました。

STEP 03 事業戦略をたてる

元手900万円、なのに初期投資費用2850万円。
差額を埋めるための取り組みとは

上)1階のレセプションスペース。現場から出てきた廃材を使ってDIYをしたり、不要になった家具を譲り受けたりしているため、このスペースには経費がほとんどかかっていない(撮影:前田 有佳利)
左下)和歌山だけでなく大阪の友人までもDIYの手伝いに駆けつけてくれた(撮影:宮原 崇)
右下)ものづくり補助金の資料。一次公募で通過しなかったが、二度目のチャレンジをして無事二次公募にて通過(撮影:前田 有佳利)

2015年4月からスタートしたワカヤマヤモリ舎。資本金は、税金など様々な条件から1000万円未満が望ましいと判断し、総額900万円としました。内訳は、豊田さんが500万円、櫻井さんが300万円、宮原さんが100万円。設計も担当している宮原さんは、設計監理料を出資するという形になりました。

改修費用は、2階のシェア住居部分に150万円、5階のゲストハウス部分に1200万円掛かっていて、今後着工の1階は1500万円を予定しています。施工を担当したAj工房の協力とDIYを手伝ってくれた友人たちのおかげで、通常より費用を抑えられているのですが、それでも出資金との差額から1950万円の不足。

この不足を補うために、「少人数私募債」という種類の社債を実施。5年償還年利2%で1口10万円として、現在34口(340万円)が集まっています。また政策金融公庫の借入で1000万円を予定。これで不足分を補って、今後の売上で返済をしていく計画です。他にも、独自性のある革新的事業の立ち上げが主な対象となる「ものづくり・商業・サービス革新補助金」も申請受付の時期が合致したこともあって挑戦。一次公募は落選したものの、再トライして無事二次で採択され840万円を受けることになりました。

さらに今後、認知拡大の意味も含め、クラウドファンディングの実施を予定しています。参加型で人々を楽しく巻き込みながら工事費の一部を補えればという目論見です。

STEP 04 みんなでつくる

県内外の友人や知人、
行政の人の協力で前進

上)右が和歌山市建築指導課 建築主事の森 隆紀さん。推進すべきものはちゃんと応援していきたいという彼の存在が大きい(撮影:前田 有佳利)
左下)森さんを中心に、和歌山市で独自につくった「既存不適格調書」のチェックシート。このシートのおかげで建築士側も行政側も気を付けるべきポイントが明確になり、確認がスムーズに(撮影:前田 有佳利)
右下)Facebookのイベントページ「みんなで○○する!」のワークショップを複数回開催。DIYをイベント化して仲間を増やしていった(提供:RICO Facebookページ)

RICOでは、仲間を増やし、場に愛着を持ってもらうということに加え、改修費用も抑えられるということで、積極的にDIYを行いました。「みんなで○○をする!」というタイトルでシリーズ化。ワークショップ形式で壁塗りや床貼りを一緒に実行できる仲間をRICOのFacebookページで呼びかけました。タイムラインには、皆が楽しそうにDIYをしている様子や一緒に食べたカレーの写真などもアップされていました。

DIYの協力をした人数はのべ80名ほど。顔ぶれは、リノベーションスクールで出会った仲間や行政職員、和歌山大学の学生など様々です。中には県外からワークショップに参加し、RICOの場づくりを通して愛着が湧き、4階の空室への移住を本格的に考えている人がいるほど!今後この場所が移住促進の場にもなりそうですね。

RICO完成に向けて心強い存在となったのは、現場のお手伝いをしてくれた人たちだけではありません。ゲストハウス開業にあたって、旅館業法の営業許可を得るには、旅館業法と消防法と建築基準法の3つの関門を全てクリアしなくてはなりません。RICOの場合、既存建物の検査済証がなかったため既存不適格調書の提出が必要となり、さらに計画部分が100平米を超えるため、用途変更の確認申請の手続きを経なければなりませんでした。その法律面で協力してくれたのが、和歌山市建築指導課 建築主事の森 隆紀さんで、RICO完成に欠かせない存在の一人。

和歌山市の場合、建築基準法に関して森さんが率先して確認項目をわかりやすくリスト化した、和歌山市独自のフォーマットを使って運用しているため、確認箇所が明確で認識の相違も少なく進行がスムーズになっています。「建築士さんをはじめとして現場の人ががんばっている、その背中をちゃんと押したいんです」という森さんの想いがあってこそ。この運用方法と志、ぜひ全国に広がってほしいものです。

STEP 05 いよいよスタート!

プレオープニングパーティを終え、
ゲストハウス始動!

上)パーティーで、Araya Catering Service新谷 岳大さんにケータリングを依頼し、フードを無料で提供。YUYBOOKS小野 友資さんの選書もコーナーに配置。グリーンのコーディネートを庭工房 松田 三郎さんに依頼(撮影:赤土誉)
左下)2015年12月23日からゲストハウスの受け入れを開始。そのため、内覧会を実施した(撮影:赤土誉)
右下)「ユタカビル」のネオンサインの点灯式。雨にも関わらず大勢の来客者が外に並び、数十年ぶりのネオン点灯に拍手と歓声があがった(撮影:前田有佳利)

たくさんの協力により、2015年12月23日(水・祝)、RICOのゲストハウスは無事にプレオープンを迎えました。「これまで応援してくれた方々への感謝」の気持ちを込め、プレオープニングパーティーを開催。

当日は、たくさんのグリーンに囲まれた中、華やかな料理が並びました。15時から内覧会、18時からパーティーを開始。あいにくの雨にも関わらず、たくさんの人がお祝いに駆けつけました。大学生や20~30代の社会人、小さいお子さんを連れた若いご夫婦から年配の方まで、のべ100名以上のパーティーとなりました。

パーティー開催にあたり、豊田さんは次のように挨拶しました。「この場が今日を迎えるにあたって、本当に多くの方にご協力をいただきました。だから、今後誰かが何かをはじめたいという時はしっかりサポートし、恩返しがしたい。皆で輪を広げるように”まち”というコミュニティを育てていきたい。和歌山がそんな輪の広がる、未来のチャンスに溢れたまちになればと思っています。」

まちの新たな拠点となったRICO。RICOはスペイン語で「豊か」という意味で、「ユタカビル」という名称に因んで名付けられています。またロゴのモチーフはタネです。これは、この場を訪れる人に、豊かさのタネを見つけてもらいたいという想いに加え、RICOをこの地に根を張る、”和歌山まちづくりのプラットホームに”と、共に育てていくことができればという想いが込められています。

今夏には1階にシェアキッチンやシェアオフィスが、また屋上には菜園など憩いの場が誕生する予定です。これからもRICOから目が離せませんね。

前田 有佳利

Writer

前田 有佳利

ゲストハウス紹介サイトFootPrints編集長。起点分析家のフリーライター・イベントデザイナー。最高の仲間×旨い飯×心地よい音楽を愛でる1986年の和歌山市生まれ。京都・東京・大阪を経て、Uターン移住中。

複合施設(ゲストハウス・シェアハウスなど)

RICO

2017.7.24更新

  • 住所

    和歌山県和歌山市新通5丁目6

  • TEL

    073-488-6989

  • URL

    http://guesthouserico.com/

  • OPEN

    ゲストハウス:月~日
     受付  7:00~10:00
        16:00~22:00
     朝食  7:30~10:00
     BAR  18:00~22:00
        (L.O.21:30)

  • 運営

    ワカヤマヤモリ舎

  • 資本金

    900万円

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