ReReRe Renovation!

リノベーションスクールとは

これから建築の仕事って、どうなるんだろう?

日本の人口は減少時代に入り、2050年には、一億人を下回ると言われている。それから住まい。空き家はすでに全国で750万戸もあって、いまのペースで新築が建ち続けると、2060年には約半分が空き家になるそうだ。

東京都豊島区のまちなみ

まちを歩いて、実感することも増えたように思います。商店街のシャッター店舗。ずっと開かない空き家の雨戸。商業ビルの窓ガラスに張られた「テナント募集」は色あせていたり。

もしあなたが「もっとまちを面白くしたい」「できれば仕事を通して何かしたい」と思っていたら。

日本全国で増えている空き家・空きビルなど、うまく活用されていない物件を、再び人が使いたくなる仕組みづくりから考えていく。そうした“リノベーションまちづくり”をなりわいにする人(家守=やもり)が、日本全国のまちで求められています。

英語を話すうえで文法が欠かせないように。まちの文法を知り、リノベーションまちづくりを仕事にしていける場。それが、リノベーションスクールです。

リノベーションスクール北九州のワンシーン

2011年7月に福岡県北九州市ではじまりました。現在は鳥取、福井、熱海、山形… 全国10都市で開催され、延べ800人以上が参加しています。

現在は、週末を中心とした2泊3日ないし3泊4日の短期集中型の学校という形で開催。建築・不動産・デザイン・フードの第一線で活躍する人たちをユニットマスターとして迎えています。

リノベーションスクールの特徴は、なんといってもリアルな点。

廃業した銭湯、6階建ての商業ビル、閉店したトンカツ屋さん… まちに実在する建物を対象物件として、リノベーションプランを企画。オーナーさんに提案します。

これまで20件以上が事業化しました。ビジネスホテルばかりのまちにゲストハウスが、チェーン店の増えた商店街に個人のカフェが、さらにはコワーキングスペースが誕生。まちに暮らす人、働く人、訪れる人の毎日を変えつつあります。

さらに、スクール参加者が自ら事業主として起業することもあります。

これまでに実現したプロジェクトの一例
左:北九州のコワーキングスペース「mikage1881」、右上:鳥取のブックカフェ「ホンバコ」、右下:熱海のゲストハウス「MARUYA」

参加する人たち

参加者は北海道から沖縄まで、日本全国より集まります。職業もさまざまです。たとえば、親から不動産を相続した2代目大家。学校の授業に違和感をおぼえた建築学科の学生。デザイナー、編集者、アーティスト。まちで飲食店や八百屋を営む商店主。地元をなんとかしたい公務員。まちの不動産会社やディベロッパーに務めるサラリーマンも参加します。

資格や専門性はもちろん大切ですが、必須ではありません。むしろ、参加する上でもっとも大切なことは「まちで面白いことがしたい」とか「地元商店街のシャッターを開けたい」という思いかもしれません。

事業を組み立てる上で必要になる基礎知識や考え方は、スクール参加前のオンデマンド講座や課題図書で学ぶことができます。

リノベーションスクール@北九州の様子

リノベーションスクールに参加すると

ここからは、よりイメージがしやすいように、わたしが参加したリノベーションスクール@豊島区を事例として紹介します。開催日時は、2015年3月6〜8日でした。

3月6日の朝9時。会場となった大正大学には約40人の参加者が集合。はじめに4つのユニットに振り分けられます。わたしは、ユニットAのメンバーに。プロジェクトをともに進めていくユニットマスターは、不動産サイト「東京R不動産」を運営するOpen Aの馬場正尊さん。

続けて、ユニットAの対象物件が発表されます。東池袋にある約100棟の賃貸マンション「ROYAL ANNEX(ロイヤルアネックス)」の共用部分にあたる「ROYAL ANNEX別館 205号室」でした。

対象物件の現状。空室となっている

ユニットAのメンバーは建築家、不動産オーナー、ワークショップのコーディネーター、ジュエリーデザイナー、美大の学生、専門学校の職員など10名。こうした場ではまだまだめずらしい(?)子育て中のお母さんが2人いたことも記しておきます。

ユニットAの顔合わせ風景

まずは、現在空室となっている対象物件を見学。空間は約30坪ほど。同行してくれたオーナーさんへ、物件概要や希望家賃をうかがいます。賃貸マンションの共用部ということもあり、ユーザーになりうる住民さんにも話を聞かせてもらいました。

続けて日中のエリアを散歩。まちにはどんな人がいるのか。どんなお店や施設があって、足りないものはなにか。情報を集めていきます。

最寄りの日出優良商店会を歩く。
時間が限られるので、歩きながらも打ち合わせます

見学を終えて、会場の大正大学へ戻ったのは15時ごろ。現地を見て浮かんだアイデアを話し合い、事業プランを固めることに。浮かんできたのは、こんなアイデアたち。

「マンションの住民が、子どもの出産などで家族が増えたときに対応できる、トランクルームはどうだろう」

「ものづくりをするクリエイターのレンタル工房にしてはどうだろう。空間を小分けにして賃料を抑えることで、これから活躍しそうな人が集まってくれたらいいと思う」

それぞれのプランには、長所も短所もあります。どのプランを採用するか話し合っていると、あっという間に夜。再び東池袋のまちへ向かうことにします。夜の人の流れを見つつ、訪ねたのはカフェ&ギャラリー「KAKULULU(カクルル)」さん。

ここでお酒を飲みつつ、話し合いを続けます。閉店後には、地元出身のオーナー高橋さんにも話を聞かせてもらいました。

印象的だったのは、エリアの名前。いまでこそ東池袋と呼ばれることが増えましたが、かつては「日の出町」という名前で通っていたそう。そして地元の人たちは、いまもその名前に愛着を持っていることがわかりました。

一方で課題も見えてきました。それは「日の出町と言えば○○だよね」というエリアイメージがないこと。そこにこそ、205号室のリノベーションプランがあるように思われました。

まだまだ話は尽きないけれど、時計を見ると深夜2時。この日は解散をしました。あ、もちろん各々の都合に合わせて順次帰宅しましたよ!

翌日は朝8時に会場へ集合。コンセプトを詰めていきます。同時進行で、事業提案に向けた準備も進めます。

考えることはロゴデザイン、図面設計、収支計画、さらにはエリアへの影響まで、盛りだくさん。通常のビジネスであれば、数ヶ月かける内容です。ところが、リノベーションスクールでは3日間で形にしてオーナーさんに提案をします。ユニット内での役割分担がカギを握ります。

オーナーさんにとって、もっとも気になる点が収支計画でしょう。どんなプロジェクトも事業として回らなければ、実現できません。今回は、改修費用と予想収益を見積もり、回収期間を4年と試算しました。

ちなみにリノベーションまちづくりの特徴は、初期投資を抑え、回収期間がきわめて短いこと。もし新築で行った場合は、投資額・回収期間ともに4〜6倍ほどかかるでしょう。けれど、社会の変化も早まる中で、長期のリスクを抱えることが必ずしも望ましいとはいえません。

事業計画のブラッシュアップに加えて、プレゼンテーションの質も重要。資料には、写真やイラストをもちいて、デザイン性も磨きます。

2日目の深夜の様子

結局2日目は、残れるメンバーで泊りこみ。交代で仮眠をとりつつ、プレゼン資料の提出〆切である午前11時ギリギリまで粘りました。徹夜に慣れたタフなメンバーばかりではありません。提出を終えると、みんなヘロヘロになっていました。

そして、3日目の午後にはオーナーさんへのプレゼンテーションを行いました。

けれど時間が足りず、事業計画をしぼりきれなかったこと。内容を盛り込みすぎて、一番伝えたいことがぼやけたこと。不完全燃焼なまま、リノベーションスクールを終えました。

リノベーションスクールの、その後

スクールの打ち上げでは、みんな煮え切らない様子。そこでユニットAは、後日オーナーさんに時間をいただき、もう一度プレゼンをさせてもらうことに。

4/24のプレゼンの様子

4/24に提案したプロジェクト名は「日の出ファクトリー」。オーナーさんからGOサインをいただき、事業化が決まりました。

ちなみに豊島区の第1回リノベーションスクールでは、4つのプロジェクトが提案され、日ノ出町と椎名町の2件が進行中です。

リノベーションスクールは、はじまりの場

参加して思ったのは、リノベーションスクールが“はじまりの場”ということ。

わたしが参加したきっかけは、実家の店舗を継ぐことでした。どうしてまちの商店街はチェーン店と駐車場ばかり増えるのだろう。そんなモヤモヤを抱える一方で、建ぺい率や延べ床面積という言葉もよく知らないほど、不動産や建築には無知。そんな中で、じぶんが商売をはじめるには、何から手をつけたらよいのだろう。そう考えての参加でした。

ほぼ徹夜で過ごしたリノベーションスクール2日目の夜。いま振り返ると「楽じゃないけど、楽しかった」。オーナーさんやまちに住む人の声を聞いたからこそ、できる限りよいプランをつくりたいと思った。今後に活きるプランづくりの具体的な方法も学べました。

「まちに何かしたい」「まちで楽しいことがしたい」と思っていたら。すでに動きはじめた人と話す中で、見えることはたくさんありました。

4/24のプレゼン直前の打ち合わせ風景

もしリノベーションスクールが気になったら、気軽にエントリーを。そして、がっつり参加をおすすめします。3日間でこれほど得られる場はなかなかない。そう思います。

書き手:大越元

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