台風のあとや経年劣化で瓦がズレたり、ひび割れを見つけたりすると「自分で直せないだろうか」と考えるのは自然なことです。軽微な損傷であれば、ホームセンターの材料で応急処置できるケースもあります。
ただし屋根のDIY修理には、転落事故や施工ミスによる悪化といったリスクが伴います。厚生労働省の発表によると、2024年の建設業における死亡災害は232人。そのうち「墜落・転落」が77人で最多でした。一人親方等の死亡災害でも「墜落・転落」が39人確認されており、プロの作業員でもこれだけの事故が起きています。
この記事では、屋根修理をDIYで行える範囲と正しい手順、やってはいけないNG行為、そして業者に頼むべき判断基準まで解説します。費用比較や火災保険の活用法も取り上げていますので、修理方法を決める前にひと通り目を通してみてください。
リフォームを考えているあなたへ、まずはぜひ知っておいていただきたい大切な事をお伝えします。
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その屋根、自分で直せる?修理前に確認したいDIYの範囲
結論から言うと、屋根のDIY修理で対応できるのは「応急処置」の範囲に限られます。本格的な修理は専門業者に任せるのが前提です。
DIYでできるのは応急処置まで
自分で対処できるのは「1〜2枚の瓦のズレを戻す」「小さなひび割れにコーキングを打つ」「直径1〜2cm程度の穴に防水テープを貼る」くらいまで。これ以上の損傷は、無理に手を出すとかえって状態を悪化させます。
屋根材の下にはルーフィングと呼ばれる防水シートが敷かれています。表面にひび割れがあっても、このルーフィングが健全なら即座に雨漏りはしません。ただし放置すると劣化が加速するため、早めの応急処置が大切です。
ルーフィングの寿命は一般的に20〜30年程度とされています。築20年を超えている住宅では、表面の損傷だけでなくルーフィングの劣化も疑う必要があります。表面を自分で直しても、下の防水シートが機能していなければ根本解決にはなりません。
【屋根材×症状別】自分で直せるかがわかる判断表
屋根材の種類と症状の組み合わせで、DIYできるかどうかが変わります。以下の表で自分のケースを確認してみてください。
| 屋根材 | 症状 | DIY可否 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 日本瓦 | 1〜2枚のズレ | ○ 可能 | 釘留めでないものが多く、手で戻せる |
| 日本瓦 | 割れ・欠け | ○ 可能 | 同じ規格の瓦と差し替えられる |
| スレート | 小さなひび割れ | △ 応急処置のみ | コーキングで一時的に埋められるが、釘固定のため1枚だけの差し替えは困難 |
| スレート | 大きな割れ・剥がれ | × 業者へ | 下地の防水紙が傷むリスクが高い |
| 金属屋根 | 表面のサビ | ○ 可能 | サビ取り・防錆塗料で対応できる |
| 金属屋根 | 防水紙の劣化 | × 業者へ | 表面から判断できず、施工も専門技術が必要 |
| トタン | 直径1〜2cmの穴 | ○ 可能 | 防水テープで応急処置できる |
| トタン | 広範囲のサビ・穴 | × 業者へ | 張り替えが必要になる |
迷ったら「業者に相談」を選んでください。自己判断で手を出して悪化させるよりも、見積もりだけ取るほうがはるかに安全です。
こんな症状は触らないで!業者に任せるべき4つのケース
以下に当てはまる場合は、自分で修理しようとせず業者に依頼しましょう。
- 複数枚にわたる広範囲の損傷:下地への影響が大きく、部分補修では対応できない
- 防水紙の劣化が疑われる:天井にシミがある、雨漏りが起きている場合は防水紙が機能していない可能性がある
- 屋根の勾配が急で登れない:6寸勾配、角度にして約30度以上は転落リスクが跳ね上がる
- アスベスト含有の可能性があるスレート屋根:石綿含有建材は2006年9月から製造・新規使用が全面禁止。ただしそれ以前にも非石綿製品はあるため、築年だけでは判断できない。設計図書や製品名がわかる場合は国土交通省の「石綿含有建材データベース」で照合し、不明な場合は専門業者に調査を依頼すること
特にアスベストの問題は健康被害に直結します。古いスレート屋根は絶対に自分で加工しないでください。
屋根修理を自分でやるならこの4つ!補修方法と手順を紹介
DIYでできる屋根の応急処置は、大きく4つに分かれます。どの方法も「本格修理までのつなぎ」である点を忘れないでください。症状に応じた方法を選びましょう。
防水テープで雨水の侵入を止める
小さな穴やひび割れには防水テープが手軽で効果的です。費用は約2,000円から。
手順はシンプルですが、貼る向きを間違えると逆効果になります。
- 補修箇所の汚れやホコリをブラシで除去する
- 水分をしっかり拭き取り、乾燥させる
- 下から上に向かってテープを重ねて貼る
- テープの端を押さえて密着させる
ここで重要なのが「下から上へ」の原則です。上から下に貼ると、テープの重なり部分に雨水が入り込んで逆流します。屋根の水の流れと同じ方向に重ねるのがポイントです。
テープを貼る前に、補修箇所の表面温度にも気を配りましょう。真夏の直射日光を受けた屋根は60度以上になることがあり、テープの粘着剤が軟化して密着不良を起こします。早朝か夕方、屋根が適温のときに作業するのが理想的です。
防水テープにはブチル系とアルミ系の2種類があります。ブチル系は柔軟性が高く曲面にフィットしやすいのが特徴。アルミ系は耐候性に優れ、屋外での持ちが良い傾向があります。補修箇所の形状に応じて使い分けてください。
コーキングでひび割れや隙間を埋める
ひび割れや隙間には変成シリコン系のコーキング剤を使います。変成シリコンは通常のシリコンと違い、上から塗装できるため屋根補修に向いています。費用は5,000〜10,000円程度。
正しい手順で施工しないと剥がれやすくなるので、以下の6ステップを守ってください。
- 古いコーキングがあればカッターで丁寧に除去する
- 補修箇所を清掃し、十分に乾燥させる
- はみ出し防止のためマスキングテープで養生する
- コーキングガンでゆっくり注入する
- ヘラで表面をならして密着させる
- 乾燥する前にマスキングテープを剥がす
変成シリコーン系シーリング材の硬化時間は、製品・気温・湿度・充填厚みによって変わります。目安として指触乾燥は数十分〜2時間程度。内部硬化は1日で数mmずつ進む製品もあるため、施工前後は必ずメーカー表示を確認してください。完全硬化前に雨に打たれると補修が無駄になるので、天気予報を確認してから作業しましょう。
注意点がもうひとつ。ひび割れに沿って線状に塗るのはOKですが、屋根材の隙間を面で塞いでしまうと排水経路がなくなり、雨漏りが悪化します。コーキングの塗りすぎには気をつけてください。
コーキング剤の使用期限にも注意が必要です。開封後のコーキング剤は空気に触れると硬化が進むため、開封したら使い切るのが基本。未開封でも製造から2年以上経過した製品は品質が低下している可能性があるため、購入時に製造年月日を確認しておきましょう。
ズレた瓦・割れた瓦を自分で交換する
日本瓦のズレや割れは、同じ規格の瓦が手に入れば自分で直せます。費用は3,000〜15,000円ほど。
- ズレた瓦の周囲を木製のくさびで少し持ち上げる
- 瓦を正しい位置にスライドさせて戻す
- ゴムハンマーで軽く叩いて微調整する
割れた瓦は同じサイズの新しい瓦と差し替えます。ホームセンターで規格が合う瓦を探すか、メーカーに型番を問い合わせてみてください。
注意したいのが瓦の規格の違いです。日本瓦には和形、平板形、S形など複数の規格があります。形状が近くてもサイズが微妙に合わないと、かえって雨水の侵入経路を作ってしまいます。交換前に既存の瓦のメーカーと型番を確認しておくのが確実です。
スレート瓦は釘で固定されているため、1枚だけの交換がとても難しい構造です。無理に引き抜くと周囲のスレートや下の防水紙まで傷めてしまいます。スレート屋根の場合は業者に依頼するのが無難です。
ブルーシートで雨漏りを一時的にしのぐ方法
台風や強風で広い範囲が損傷した場合は、ブルーシートで覆って雨の侵入を防ぎます。業者の手配がすぐにつかないときの緊急手段です。
- ブルーシートを屋根の棟を跨ぐように広げる
- 軒先側が下、棟側が上になるよう重ねる
- 土のうで四辺と中間部を固定する
棟とは屋根のてっぺんの部分です。ここを跨いで両面に垂らすことで、どちらの面から雨が降っても浸入を防げます。
ブルーシートには厚さの等級があり、応急処置には#3000以上の厚手品を選ぶのが基本です。ただし耐久性と価格は、番手だけでなくUV仕様の有無・サイズ・メーカーによって変わります。メーカーが代表的な#3000製品で約1年としている場合もあれば、小売では「半年〜1年程度」と案内されている場合もあるため、購入時にはUV仕様・厚み・ハトメ間隔を確認してから選んでください。薄い#1000番台は応急処置にも向きません。
固定には土のうを使うのが原則です。レンガやブロックは風で落下すると危険なため避けてください。土のうが手に入らない場合は、水を入れたペットボトルをネットに入れて代用する方法もあります。
ブルーシートはあくまで一時しのぎ。耐久期間内に業者へ本格修理を依頼してください。
台風の直後は業者が混み合い、順番待ちで数週間〜数ヶ月かかることもあります。ブルーシートで応急処置した時点で、複数の業者に連絡を入れておくと修理までの待ち時間を短縮できます。
何を買えばいい?屋根のDIY修理に必要な道具と材料
屋根に登る前に、必要なものを揃えておくのが鉄則です。「安全装備→補修材料→便利工具」の順で優先度が高く、安全装備なしで屋根に登るのは絶対にやめてください。
安全装備は最優先で用意する
最低限必要な安全装備は3つです。
- フルハーネス型安全帯:5,000〜15,000円。肩・胸・腿にベルトを通す全身型の落下防止器具。業務用の基準では高さ6.75mを超える作業で着用が義務づけられている。2階建て住宅の屋根高さは一般的にこの基準前後になることが多いため、フルハーネス型を選ぶのが安心
- ヘルメット:2,000〜5,000円。飛来落下物と墜落時の衝撃から頭を守る
- 屋根作業用の滑り止め靴:3,000〜8,000円。HyperVソールなど耐滑性能の高いものを選ぶ
安全装備一式で1〜3万円。この出費を「もったいない」と感じるかもしれませんが、転落事故の治療費や後遺症と比べれば安いものです。
フルハーネスを買っても、固定する親綱やアンカーがなければ意味がない点にも注意が必要です。住宅の屋根には業務用のアンカーポイントがないため、固定方法を事前に検討してください。棟や煙突に直接ロープを掛ける方法は強度が不明で危険です。確実な固定ができない場合は、屋根に登ること自体を見送りましょう。
安全装備は使う前に必ず点検してください。ベルトの縫い目がほつれていないか、金具に変形やサビがないか、ロープに擦れやキズがないかを確認します。中古品やフリマアプリで購入した安全帯は、使用履歴がわからないため信頼性が低く、おすすめできません。
補修に使う材料の選び方
補修材料はホームセンターで揃います。主な材料と価格帯の目安は以下のとおりです。なお、価格は製品仕様や販売店によって変動するため、あくまで参考としてください。
| 材料 | 価格目安 | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| コーキング剤 | 700〜900円/本 | 変成シリコン系を選ぶ。シリコン系は塗装できないので屋根には不向き |
| コーキングガン | 約900円 | コーキング剤の注入に必要 |
| 防水ブチルテープ | 500〜1,000円前後/巻 | 小さな穴やひび割れに。「防水」と明記されたものを選ぶ。商品仕様で価格差が大きい |
| 防水アルミテープ | 800〜1,500円前後/巻 | ブチルテープより耐久性が高い。商品仕様で価格差が大きい |
| ブルーシート#3000 | 2,000〜3,000円前後 | 3.6m×5.4mサイズ目安。#3000以上を選ぶ。UV仕様の有無で価格が変わる |
補修材料だけなら3,000〜5,000円で済みます。安全装備と合わせても2〜5万円が目安です。
購入時に注意してほしいのが、テープの種類です。「防水」と書かれていないテープには防水性がないものもあります。パッケージの説明をよく確認してから買いましょう。
あると作業がはかどる便利な工具
必須ではありませんが、以下の工具があると作業効率が上がります。
- ワイヤーブラシ:補修箇所の汚れやサビを落とす
- カッター:古いコーキングの除去に使用
- ヘラ:コーキングをならすのに必要
- マスキングテープ:養生用。はみ出しを防ぐ
- ゴムハンマー:瓦の位置調整に使う
- LEDヘッドライト:軒裏や暗い部分の確認に便利。両手が空くため安全性も向上する
どれもホームセンターで数百円〜千円程度で手に入ります。
命を守るために!屋根に登る前に必ず確認したい安全対策
前述のとおり、プロの作業員でも墜落・転落による死亡事故が年間100人以上発生しています。DIYで屋根に登るなら、安全対策は絶対に省略しないでください。
はしごは75度の角度で立てかけ、上端を60cm出す
はしごの立て方ひとつで転落リスクは大きく変わります。
- 壁に対して75度の角度で立てかける
- はしごの上端を屋根の端から60cm以上突き出す
- 立てかける場所は軒先にする
軒先とは屋根が外壁より外に張り出している部分の先端です。ケラバと呼ばれる屋根の三角形の端に立てかけると、はしごが不安定になり転落の原因になります。
労働安全衛生規則では上端60cm以上の突き出しが定められています。DIYに直接適用される基準ではありませんが、安全のために同じルールを守りましょう。
75度の角度は目分量ではわかりにくいものです。目安として、はしごの足元から壁までの距離を、はしごの長さの約4分の1にすると、ほぼ75度になります。
はしごの足元には滑り止めゴムがついているか確認してください。土やぬかるみの上に設置する場合は、板を敷いて安定させます。はしごを登るときは両手でしっかりつかみ、体を正面に向けた状態で一段ずつ上がるのが基本です。
雨上がり・強風・朝露のある日は作業しない
屋根の表面が濡れていると、どんなに滑り止め靴を履いていても危険です。
雨の日はもちろん、雨上がりや朝露で屋根が湿っている時間帯も避けてください。風速が強い日も体がふらつくため厳禁。作業に適しているのは、晴れて屋根が完全に乾いた日中の時間帯だけです。
「少しくらい大丈夫だろう」が最も事故につながりやすい判断です。
必ず2人以上で作業する理由
屋根の作業は必ず2人以上で行ってください。ひとりで登ると、万が一のときに助けを呼べません。
もうひとりの役割は3つあります。はしごの根元を押さえる補助、道具の受け渡し、そして緊急時の通報です。1階の低い屋根からの転落でも死亡事故は起きています。高さに関係なく、ひとりでの作業は避けましょう。
地上にいる補助者は、作業者の動きを常に目視できる位置に立ってください。作業者が姿勢を崩した瞬間にすぐ声をかけられる距離感が大切です。携帯電話をすぐ使える状態にしておき、119番への通報手順も事前に共有しておくと万が一の際に迅速に対応できます。
屋根の傾斜がきついほど危険度は上がる
屋根の傾斜は「寸勾配」で表されます。水平方向に約30.3cm進んだときに、垂直方向に何cm上がるかを示す数値です。
- 緩勾配:3寸以下。比較的歩きやすい
- 並勾配:3〜5寸。一般住宅に多い角度で、約17〜27度に相当
- 急勾配:6寸以上。約30度を超え、立っているだけでも不安定
6寸勾配を超える屋根は、DIYで登ること自体を避けてください。外から見て「急だな」と感じたら、それは登るべきではない屋根です。
自宅の屋根勾配がわからない場合は、建築時の図面を確認するか、地上からスマートフォンの角度測定アプリで概算値を出す方法もあります。
勾配に加えて、屋根材の種類も滑りやすさに影響します。金属屋根は乾いていても滑りやすく、スレートは苔が生えると想像以上にグリップが効きません。屋根材ごとの特性を踏まえて作業するかどうかを判断してください。
屋根修理DIYに適した時期と天候の見極め方
屋根に登る安全性は、季節と天候に大きく左右されます。適切なタイミングを選ぶだけで、作業の安全性と仕上がりが大きく変わります。
ベストシーズンは春と秋
屋根修理のDIYに最も適しているのは、4〜5月と10〜11月です。
春は気温が穏やかで湿度も低く、コーキング剤や防水テープの密着性が安定します。秋は台風シーズン後の点検・補修に最適な時期。晴天が続きやすいため、作業日程を組みやすい利点もあります。
一方、避けるべき時期もはっきりしています。6〜7月の梅雨時期は屋根が乾かず滑落リスクが高まります。8月は屋根表面が60度以上に達することもあり、熱中症と火傷の危険があります。12〜2月は霜や凍結で屋根が滑りやすく、日没も早いため作業時間が限られます。
作業開始前に確認すべき天候条件
季節が適していても、当日の天候次第では作業を中止すべきケースがあります。
作業可能な条件は「降水確率20%以下」「風速5m/s以下」「前日に雨が降っていない」の3つが目安。気象庁のサイトや天気アプリで風速と降水確率を確認してから判断してください。
天気予報で「晴れ」と出ていても、山沿いや海沿いでは突然の突風が吹くことがあります。作業中に風が強まってきたら、無理をせずすぐに地上に降りる判断が大切です。
台風シーズン前の点検が被害を減らす
台風が来てから慌てるのではなく、6〜7月のうちに屋根の状態をチェックしておくのが理想です。瓦のズレや棟板金の浮き、コーキングの劣化がないか、地上から目視で確認してみてください。
小さな不具合を台風前に補修しておけば、大きな損傷を防げる可能性が高まります。台風後は業者への依頼が集中して費用も割高になりがちです。予防的な点検と補修は、結果的にコストを抑えることにもつながります。
安く済むけどリスクも大きい!屋根DIYのメリットとデメリット
ここまで読んで「結局、自分でやるべきなのか」と迷っている方もいるでしょう。メリットとデメリットを整理して、判断材料にしてください。
メリット:費用が安い・すぐ対応できる・業者選びの手間がない
最大のメリットはコストの安さです。防水テープの補修なら、業者に頼めば3〜5万円かかるところがDIYなら約2,000円。コーキング補修も業者の1.5〜30万円に対して、DIYなら5,000〜10,000円で済みます。
業者の手配を待たなくていいのも利点です。台風のあとは業者への依頼が殺到して、数週間待ちになることも珍しくありません。応急処置だけでも自分で対応できれば、その間の被害拡大を防げます。
道具や材料はホームセンターで即日入手可能。自分のペースで作業できるため、休日を使って少しずつ進めることもできます。
自分で屋根に上がることで、屋根の状態を直接確認できるのも隠れたメリットです。業者に依頼すると写真で説明を受けるだけですが、自分の目で見ることで屋根全体の劣化具合がわかり、今後のメンテナンス計画を立てやすくなります。
デメリット:転落の危険・施工ミスで悪化・保証が効かなくなることも
一方でリスクも見逃せません。
転落事故の危険。冒頭で触れたとおり、プロの作業員でも墜落・転落による死亡事故が年間100人以上発生しています。安全装備なしでDIYをするのがどれだけ危険か、この数字が物語っています。
施工ミスで状態が悪化するケース。コーキングで排水経路を塞いでしまい雨漏りがひどくなった、防水紙の劣化に気づかず表面だけ補修して放置してしまった、といった失敗例は少なくありません。数千円のDIYが、結果的に数十万円の修理費用につながることも。
ハウスメーカーの保証が効かなくなる場合もあります。契約内容にもよりますが、DIYで手を加えた箇所が保証対象外になるケースがあるため、作業前に契約書の保証条項を確認しておきましょう。
作業中に屋根材や工具を落として近隣に被害を与えた場合、民法709条に基づく損害賠償責任が生じる可能性もあります。
費用だけ見ればDIYが圧倒的に安い。しかし「失敗したときのコスト」まで含めて考えると、必ずしも得とは限りません。
DIYに向いているのは「平屋や1階部分の低い屋根」「瓦のズレなど軽微な損傷」「晴天が続く時期」の3条件を満たすケース。逆に2階以上の高所、広範囲の損傷、築30年超の住宅では、最初から業者に依頼するほうが安全で合理的です。自分の屋根の状態と照らし合わせて判断してください。
その補修、逆効果かも?屋根DIYでありがちなNG行為
「自分で直したのに、前より雨漏りがひどくなった」。屋根のDIY修理では、知識不足が原因でかえって被害を拡大させてしまうケースがあります。4つのNG行為を紹介します。
コーキングで雨水の通り道を塞いでしまう
屋根材の隙間を「雨が入りそうだから」とコーキング剤で全面的に埋めてしまう失敗が多発しています。
屋根材同士の隙間には、入り込んだ雨水を排出する役割があります。この隙間をコーキングで塞ぐと、行き場を失った水が毛細管現象で内部に吸い上げられ、雨漏りが悪化します。毛細管現象とは、細い隙間に液体が自然と吸い上がる現象のことです。
コーキングは「ひび割れの上に線状に塗る」のはOK。「屋根材同士の隙間を面で塞ぐ」のはNGです。この区別を覚えておくだけで、致命的な失敗を避けられます。
雨の日や風の強い日に屋根に登る
「雨漏りしているから急いで直したい」という気持ちはわかります。しかし濡れた屋根は滑り止め靴を履いていても滑ります。強風の日は体がふらつき、バランスを崩しやすい状態です。
転落事故は「少しくらい大丈夫だろう」という判断から起きています。雨漏りしているときは、室内でバケツを設置して被害を最小限に抑え、天候が回復してから屋根に上がってください。
屋根に直接釘を打ったり板を貼ったりする
穴や割れを塞ごうとして屋根に釘を打つと、釘穴が新たな雨水の侵入経路になります。屋根材の下にある防水紙を貫通してしまうと、そこから雨水が建物内部に入り込むリスクも生まれます。
板やトタンを貼り付ける場合も同じです。固定のために釘やビスを使えば穴が増え、雨漏り箇所を増やすだけ。応急処置には防水テープかブルーシートを使いましょう。
同様に、高圧洗浄機で屋根を洗浄するのも避けてください。水圧が強すぎると屋根材の表面塗膜を剥がしたり、防水紙まで傷めたりする場合があります。汚れが気になる場合も、屋根の洗浄は業者に任せるのが安全です。
古いスレート屋根をDIYで切断・研磨する
スレート屋根の石綿含有有無は、築年だけでは判断できません。石綿含有建材は2006年9月から製造・新規使用が全面禁止されていますが、それ以前にも非石綿製品はあります。アスベストは天然の鉱物繊維で、吸い込むと中皮腫や肺がんを引き起こすリスクがある物質です。
触れるだけでは飛散しませんが、切断や研磨をすると微細な繊維が空気中に舞い上がります。大気汚染防止法ではアスベスト含有建材の飛散防止措置が義務づけられており、違反した場合は3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
自分の家のスレート屋根にアスベストが含まれているかどうかは、以下の手順で確認できます。
- 建築時の設計図や仕様書で屋根材の製品名を確認する
- 国土交通省の「石綿含有建材データベース」で製品名を照合する
- 不明な場合は専門業者に調査を依頼する
製品名と製造時期がわかれば、上記データベースで石綿含有の有無を調べられます。古いスレート屋根は、含有の有無が確認できるまで絶対に自分で切断・研磨しないでください。
自分で直すと本当に安い?DIYと業者の費用を徹底比較
屋根のDIY修理は材料費だけで済むため、たしかに安上がりです。ただし「火災保険を使えば業者に頼んでも自己負担ゼロ」になるケースもあります。費用面だけで判断する前に、全体像を把握しておきましょう。
補修方法別のDIY費用と業者費用の目安
| 補修方法 | DIY費用 | 業者費用 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 防水テープ補修 | 約2,000円〜 | 3〜5万円 | テープ+清掃道具 |
| コーキング補修 | 約5,000〜10,000円 | 1.5〜30万円 | 施工範囲により大幅に変動 |
| 瓦交換(1〜2枚) | 約3,000〜15,000円 | 0.5〜6万円 | スレートはDIY非推奨 |
| ブルーシート養生 | 約2,000〜5,000円 | 3〜10万円 | #3000以上を推奨 |
| 屋根塗装(全面) | 3〜15万円 | 40〜80万円 | 足場代別途10〜20万円 |
材料費だけを見るとDIYが圧倒的に安いのは事実です。ただし業者費用には足場代が別途かかる場合がある点も押さえておいてください。
火災保険で屋根修理の自己負担を減らす方法
台風や強風が原因で屋根が損傷した場合、火災保険の「風災」補償が使える可能性があります。経年劣化は対象外ですが、自然災害による被害なら修理費全額が補償されるケースも珍しくありません。
火災保険の申請に必要な条件は3つです。
- 損傷の原因が自然災害であること
- 修理費用が保険の免責金額を超えていること
- 被災から3年以内に申請すること
申請の流れは、保険会社に連絡→被害写真・修理見積書・保険金請求書・事故状況報告書の4点を準備→郵送→審査後、最短1週間〜1ヶ月程度で保険金が振り込まれます。
DIYで修理してから保険を申請しようとするケースには注意が必要です。修理後では被害の証拠が残らず、保険申請が通りにくくなります。被害を見つけたら修理より先にスマートフォンで写真を撮り、保険会社に連絡してください。
火災保険には自動車保険のような等級制度が一般的ではなく、保険金請求の回数そのものが翌年保険料に直結する仕組みではありません。ただし、商品改定や建物条件の見直しにより、更新時の保険料が変わることはあります。正当な損害は遠慮なく請求しましょう。
なお「火災保険で無料修理できます」と飛び込み営業してくる業者には要注意です。保険が下りなかった場合にキャンセル料を請求されるトラブルが報告されています。保険の手続きは自分で進めるか、信頼できる業者に相談するのが安全です。
火災保険を申請する際のコツとして、被害写真は全体像と損傷箇所のアップの両方を撮影しておくと審査がスムーズに進みます。撮影日がわかるようにスマートフォンの日付表示機能を使い、屋根だけでなく室内に生じた雨漏り痕も記録しておいてください。
自治体の補助金・助成金が使えるケースもある
屋根修理の内容が省エネリフォームや耐震改修に該当する場合、自治体の補助金が利用できることがあります。断熱塗装への塗り替えや、耐震補強を兼ねた葺き替え工事などが対象になりやすい項目です。
2026年度は「住宅省エネ2026キャンペーン」として、先進的窓リノベ2026・みらいエコ住宅2026・給湯省エネ2026・賃貸集合給湯省エネ2026の4事業が実施されています。屋根の断熱改修が補助対象に含まれるケースもあるため、公式サイトで詳細を確認してください。
補助金には「着工前に申請する」ことが条件になっているものがほとんどです。工事を始めてから申請しても受理されません。お住まいの自治体の住宅リフォーム支援制度を確認してから動きましょう。2026年現在の情報のため、最新の制度は各自治体の公式サイトで確認してください。
なおDIY工事は補助金の対象外になるのが一般的です。補助金を活用するなら業者に依頼する必要があります。
耐震改修に関しては、各自治体が独自の補助制度を設けているケースが多くあります。昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の住宅では、屋根の軽量化が耐震補強として評価される場合もあるため、自治体の窓口で相談してみてください。
業者に屋根修理を頼んだ場合の費用相場
「DIYでは無理そうだけど、業者に頼むといくらかかるのか」。費用感がわからないと依頼に踏み切れない方も多いでしょう。2026年現在の修理方法別の費用相場を紹介します。
部分修理の費用目安
損傷が一部に限られている場合は、部分修理で対応できます。
| 修理内容 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 瓦の差し替え | 1枚あたり3,000〜4,000円+諸経費3万円程度 | 同一規格の在庫があるかで変動 |
| 棟板金の補修 | 1mあたり8,000〜10,000円+諸経費3万円程度 | 下地の貫板交換を含む場合あり |
| 漆喰の補修 | 1mあたり2,000〜3,000円+諸経費3万円程度 | 瓦屋根の棟部分に使用 |
| 雨漏り修理 | 5〜30万円 | 原因箇所の特定が難しく調査費が加算される場合あり |
部分修理でも足場が必要になるケースでは、別途10〜20万円の足場代がかかります。屋根全体の状態が悪い場合は、部分修理を繰り返すより全面改修のほうが割安になることもあるため、業者に全体の診断を依頼するのがおすすめです。
全面改修の費用目安
屋根全体の改修には、大きく3つの工法があります。
屋根塗装は1棟あたり30〜70万円が相場。スレート屋根や金属屋根の防水性を回復する方法で、下地が健全な場合に適しています。
カバー工法は1棟あたり80〜150万円が相場。既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねる工法で、廃材が少なく工期も短い利点があります。ただし屋根が二重になるぶん重量が増すため、耐震性への影響を事前に確認してください。軽量なガルバリウム鋼板を重ねる場合は増加する重量が比較的小さく、耐震面での負担が抑えられます。
葺き替えは1棟あたり100〜190万円が相場。既存の屋根材を撤去して新しい屋根材に交換します。下地の状態も確認・補修できるため、築30年以上の住宅やルーフィングの劣化が疑われる場合に適した工法。アスベスト含有屋根材の撤去が必要な場合は、処分費が加算されて150〜220万円程度になります。
いずれの工法でも、複数の業者から相見積もりを取って比較するのが基本です。
見積もり時に確認すべきポイント
業者の見積書を比較するとき、金額だけで判断するのは危険です。確認すべきポイントは5つあります。
1つ目は「足場代が含まれているか」。足場は別途10〜20万円かかるため、含まれていない見積もりと比較すると差額が大きく見えます。2つ目は「廃材処分費の有無」。葺き替えの場合は撤去した屋根材の処分費用が発生します。
3つ目は「保証期間と保証範囲」。施工後に不具合が出た場合の対応を書面で確認してください。4つ目は「工期の目安」。工期が極端に短い場合は手抜き工事の可能性があります。5つ目は「支払い条件」。全額前払いを求める業者はトラブルのリスクが高いため注意が必要です。
自分で無理なら業者へ!失敗しない屋根修理業者の選び方
DIYの範囲を超える修理は、業者に任せるのが確実です。ただし屋根修理の業界では悪質な業者によるトラブルが増えています。信頼できる業者の見分け方と、騙されないための知識を押さえておきましょう。
信頼できる業者を見分ける3つのチェックポイント
業者選びで確認すべきポイントは3つあります。
- 建設業許可を取得しているか:建設業許可の有無は、法令上の要件を満たしているかを見る一つの目安。500万円以上の工事を請け負うには許可が必要ですが、500万円未満の工事は許可がなくても請け負えます。許可の有無だけでなく、見積明細・施工実績・保証内容もあわせて確認しましょう
- 見積書の内訳が明確か:「屋根修理一式○万円」のようなざっくりした見積もりは要注意。工事内容・材料費・人件費・足場代などが項目別に記載されている見積書を出す業者を選んでください
- 所在地と連絡先がはっきりしているか:事務所の住所が確認できない、携帯電話しか連絡先がないといった業者は、工事後に連絡が取れなくなるリスクがあります
見積もりは2〜3社から取って比較するのが基本です。極端に安い業者は手抜き工事の可能性があり、逆に高すぎる業者は不必要な工事を含めている場合があります。
点検商法・悪徳業者の手口と対処法
国民生活センターによると、屋根工事に関する相談件数は2023年度に7,845件で過去最多を更新しました。2018年度の約3,240件から5年間で2.4倍に増加しています。契約当事者の8割超が60歳以上で、高齢者が狙われやすい傾向があります。
よくある手口は以下のパターンです。
- 「近くで工事をしていて、お宅の屋根が壊れているのが見えた」と突然訪問してくる
- 「無料で点検します」と屋根に登り、別の家の写真を見せて「こんなに傷んでいる」と不安をあおる
- 中には点検中にわざと屋根材を壊し、「修理が必要だ」と迫る業者もいる
- 「今日契約すれば割引します」と即日契約を急かす
訪問販売で契約してしまった場合でも、契約書を受け取ってから8日以内であればクーリングオフが可能です。困ったときは消費者ホットライン「188」に相談してください。
台風や地震の直後は、被災地域を中心にこうした業者が急増します。焦って契約せず、まずは自治体の相談窓口や知人の紹介で業者を探すのが安心です。
業者選びに迷ったら、地元の屋根工事専門店か、リフォーム見積もりサイトを活用する方法もあります。見積もりサイトでは複数業者を一括で比較できるため、相場感をつかむのに便利です。ただし見積もりサイト経由の場合も、最終的には業者と直接やり取りして、対応の丁寧さや説明のわかりやすさを自分の目で確かめてから契約してください。
屋根修理を自分でやるときによくある質問
Q. ブルーシートの応急処置はどれくらい持つ?
ブルーシートの耐久期間は番手やUV仕様の有無によって異なります。メーカーが代表的な#3000製品で約1年としている場合もあれば、使用環境によっては半年程度で劣化する場合もあります。紫外線で劣化が進むため、UV仕様でないものはさらに短くなります。あくまで応急処置なので、早めに業者へ本格修理を依頼してください。
Q. 屋根修理をDIYしたら火災保険は使えなくなる?
DIYしたこと自体で火災保険が無効になるわけではありません。ただし被災箇所を自分で修理すると、被害の証拠が消えて保険の申請が通りにくくなります。被害を見つけたら、まず写真を撮って保険会社に連絡→修理見積もりを取る→申請、の順番を守りましょう。DIYは応急処置にとどめるのが得策です。
Q. 雨漏りしたらまず何をすればいい?
まずは室内の被害拡大を防ぐことが先です。雨漏り箇所の下にバケツを置き、水はね防止のためにバケツの底に雑巾を入れてください。近くの家具や家電は移動させましょう。雨の日に屋根に登るのは絶対にNGです。天候が回復してから業者に連絡してください。
Q. 雨漏りで漏電する危険はある?
雨漏りは漏電の主要な原因の一つです。「雨の日だけブレーカーが落ちる」という症状がある場合は漏電の可能性が高いため、すぐに電力会社や電気工事業者に点検を依頼してください。漏電を放置すると感電や火災につながる深刻なリスクがあります。
Q. 屋根に登らないで点検する方法はある?
ドローンによる屋根点検が普及しています。費用は5,000〜20,000円、所要時間は数十分で、転落リスクなしで屋根の状態を確認できます。空港付近では航空法の飛行制限があるため事前に確認が必要です。手軽な方法なら、双眼鏡での地上からの目視や2階の窓からの確認も有効です。
Q. DIY修理にかかる時間の目安は?
防水テープの補修は準備を含めて1〜2時間程度。コーキング補修は養生と乾燥時間を含めて半日が目安です。瓦の差し替えは慣れていない場合は2〜3時間かかることもあります。いずれも天候と安全確認の時間を別途見込んでおいてください。
Q. 屋根の耐用年数は屋根材ごとにどれくらい違う?
日本瓦は50〜100年、スレートは20〜30年、ガルバリウム鋼板は30〜50年、トタンは10〜20年が目安です。ただし環境や施工品質によって差が出ます。耐用年数が近づいたら、部分修理よりも全面改修を検討するタイミングです。
Q. 2階建ての屋根にDIYで登るのは危険?
2階建て住宅の屋根は地上から7〜9m程度の高さになります。この高さからの転落は死亡事故につながるケースが多く、プロでもフルハーネスと安全帯の着用が義務レベルで求められる高さです。DIYで2階の屋根に登るのは原則として避け、業者への依頼を検討してください。
まとめ
屋根修理のDIYで対応できるのは、防水テープやコーキングによる応急処置の範囲まで。安全装備を揃え、天候や季節を選び、正しい手順を守れば、軽微な損傷は自分で対処できます。ただし転落事故のリスクや施工ミスによる悪化を考えると、無理は禁物です。
まずは記事冒頭の「屋根材×症状別の判断表」で、自分の屋根がDIYできる範囲かどうかを確認してください。DIYできるなら安全装備を揃えてから作業に取りかかりましょう。少しでも不安があれば、2〜3社から相見積もりを取って業者に依頼するのが確実です。
火災保険や自治体の補助金が使えるケースもあるため、費用面の選択肢を把握したうえで判断してください。業者に頼む場合は、見積書の内訳が明確で所在地のはっきりした業者を選ぶことが、トラブルを避ける第一歩です。
具体的な次のステップとして、まず屋根の状態を地上から確認し、判断表でDIY可能な範囲かどうかを見極めてください。DIY可能なら安全装備の購入から始め、業者に依頼するなら2〜3社に見積もりを取ることから動き出しましょう。


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